ふるさと 三つの歌曲 |
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ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの よしや うらぶれて異土の乞食(かたい)となるとても 帰るところにあるまじや ひとり都のゆふぐれに ふるさとおもひ涙ぐむ そのこころもて 遠きみやこに帰へらばや 遠きみやこに帰へらばや |
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犀星の詩の中では最も良く知られたものでしょう。当然のことながら多くの作曲家がこの詩に曲をつけておりますが、私の耳にできた限りでは詩の言葉の深みをなかなかうまく生かしきれずにあまり印象に残らないものになってしまったものが多かったように思います。
小倉のこの曲もその点では、「犀川」のあの見事な描写に比べるとどうしても影の薄いものになってしまっております。
朗々と歌いこまれる冒頭が、都の孤独のところでテンポを速めて不安感を強調し、また詠唱風に諦観を歌いあげる終結部、たいへん考え抜かれた歌だとは思うのですが、ずっと長調のメロディであることも含め、詩の紡ぎ出す情感とはちがうところに歌ができてしまっているように感じられました。
( 2014.10.20 藤井宏行 )