Poème de Gitanjali Op.22 |
ギタンジャリの詩 |
Les nuages s'entassent sur les nuages ; il fait sombre. Amour ! ah pourquoi me laisses-tu dehors attendre tout seul à la porte ? Dans l’affairement du travail de midi, je suis avec la foule ; mais par ce sombre jour solitaire je n’espère seulement que toi. Si tu ne me montres point ta face, si tu me laisses complètement de côté, je ne sais pas comment je traverserai ces longues,ces pluvieuses heures. Je reste à contempler le large obscurcissement du ciel et mon cœur plaintif rôde avec le vent sans repos. |
雲は雲の上に積み重なり あたりは暗くなる いとしい人よ!ああ なぜあなたは私を 扉の外にひとりで待たせるのですか? 真昼の仕事の忙しさの中では 私は群衆と一緒にいます けれど こんな暗い孤独な日には 私が望むのは ただあなただけなのです もしもあなたが私にその顔を見せて下さらないのなら もしもあなたが私をすっかり放っておくのなら 私には分かりません どうやって過ごせば良いのか この長い この雨の時を 私はずっと見つめているのです あの広い 暗くなり行く空を そして私の嘆きの心は さまようのです 絶え間なく吹く風と共に |
前回タゴールの詩による歌曲を取り上げた際にはこのジッドの著作権は切れておりませんでしたので見送ったのですが、その後ようやく著作権切れとなりましたのでこの詩を取り上げることとします。インドの大詩人タゴールの代表作と言われる103篇(英語版 オリジナルのベンガル語版はもう少し多いようです)からなる詩集「ギタンジャリ」は、同じ詩人の別の詩集「園丁」の中の詩が西欧の各語に訳されておびたたしい数の歌曲となっているのに比べ、驚くほど西欧の作曲家は取り上げていないのです。決して歌になりにくいようなタイプの詩ではありませんので、めぐりあわせだけの問題ではないかとは思いますけれども。そんな中、このダリウス・ミヨーがアンドレ・ジッドの訳したフランス語の詩に実に洒落たメロディをつけているのは大変に貴重です。
詩は「ギタンジャリ」 第18番目の詩。どんよりと暗い夕暮れに恋しい人をひとり待っている、このひどい天気と同じように不安でやるせない気持ちが切なく表現されています。ところが音楽の方は清楚なさわやかささえも感じさせる軽やかなもの。その微妙なズレ具合が不思議な美しさを生み出しています。
CPOレーベルにあるミヨー歌曲集でのドンブラディの歌でしか聴けないようですが、なかなか美しく歌われています。
( 2014.10.16 藤井宏行 )