犀川 三つの歌曲 |
|
うつくしき川は流れたり そのほとりに我は住みぬ 春は春、なつはなつの 花つける堤に座りて こまやけき本のなさけと愛とを知りぬ いまもその川ながれ 美しき微風ととも 蒼き波たたへたり |
|
歌曲をそれほど多く書いてはいない小倉朗(おぐら ろう)ですが、この犀星の代表的な詩につけた歌だけは現在でも良く知られており、時折リサイタルのプログラムを飾ります。舟歌を思わせるような8分の3拍子のしなやかなリズムに、たいへんに素朴で爽やかなメロディのついた美しい歌です。犀星の紡ぎ出すやさしい響きの言葉と溶け合って幸せな聴後感に包まれます。リリックなテノール歌手にぴったりのレパートリーではないでしょうか。
( 2014.10.16 藤井宏行 )