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O mistress mine    
 
おい おれのカノジョ  
    

詩: シェイクスピア (William Shakespeare,1564-1616) イングランド
    Twelfth Night (十二夜) Act.2 Scene.3 O mistress mine

曲: バックス (Sir Arnold Edward Trevor Bax,1883-1953) イギリス   歌詞言語: 英語


O mistress mine,where are you roaming?
O stay and hear! your true-love's coming
That can sing both high and low;
Trip no further,pretty sweeting,
Journey's end in lovers' meeting?
Every wise man's son doth know.

What is love? 'tis not hereafter;
Present mirth hath present laughter;
What's to come is still unsure:
In delay there lies no plenty,?
Then come kiss me,Sweet and twenty,
Youth's a stuff will not endure.

おい おれのカノジョ どこほっつき歩いてんだ?
おい待て、聴け!あんたの恋人が来てんだから
おれは高くも低くも歌えるぜ
どこへも行くんじゃねえぞ、かわいいスィートハート
探し回ったって結局あ恋人のとこに戻るって
頭のイイ奴あ良く知ってんだからさ

恋って何だい? 先のことじゃねえよな
今ユカイにすりゃ今笑ってられる
先のことなどわかんねえんだから
ぐずぐずしていちゃ何もできない
だからキスしておくれ、甘く、何度も
若い時はただ一度、長くは続かないのさ


シェイクスピアのロマンティックな喜劇「十二夜」に出てくる道化師のフェステ、この戯曲では大活躍でしんみりした「来たれ 死よ」や劇の大詰めの歌「雨が毎日降るからさ」など色々歌っていますけれども、物語の多くの部分ではこんな風に与太者たちとクダを巻いて馬鹿騒ぎをしています。これは第2幕第3場から。名だたる英文学の泰斗の方々はもっと格調高く訳しておられますが、情景としてはこんな言葉づかいの方がしっくりくるように思います。
フィンジ、ヴォーン=ウイリアムス、ウォーロック、クィルター、サマヴェルとイギリスの歌曲作家と目される人はこの詩を皆取り上げているような感もありますが、アーノルド・バックスにもあったのですね。2000年にリリースされたエドガー=ウィルソンのテノールにコウル弦楽四重奏団の伴奏がついた演奏(Somm)が世界初録音とありましたのでほとんど聴くチャンスはないかも知れませんが、弦楽の響きにテノールの優しい声が溶け合ってとても素敵な歌でした。思わず「カノジョ」もほろっと来そうな...
第一次対戦中の作曲ではないか、とライナーにありましたのでけっこう長いこと録音にも恵まれていなかったことになりますが、そもそもバックスの歌曲自体が取り上げられることが少ないですので。でもそれがもったいないくらい素晴らしさです。

( 2014.10.13 藤井宏行 )


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