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Liebe    
  Italienisches Liederbuch
愛  
     イタリアの歌の本

詩: ハイゼ (Paul Heyse,1830-1914) ドイツ
    Übersetzungen  Ich will nur Ihn!

曲: マルクス (Joseph Marx,1882-1964) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Ich will nur Ihn! Und doch,kommt er zu mir
Und plaudert dann von lauter schönen Dingen,
Von einem Lied,das er mich hörte singen,
Vom Sternenhimmel,von den Rosen hier,

Harr' ich umsonst,indes ich heimlich sacht
Zerreiß' an meinem Tuch die feinen Spitzen,
Daß endlich Feuer möge sprüh'n und spritzen
Aus dieser diamantnen Seele Schacht.

Er scheut,sich hinzugeben. Zarte Scham
Zwingt ihn,das Wort zurückzupressen,
Daß meine Lieb' ihn ganz gefangen nahm
Und daß um mich er alles hat vergessen!

あたしは彼だけが欲しいの!だけど彼があたしのところに来て
素敵なことを話してくれるとき
彼が私が歌うのを聴いた曲のこととか
星空のこと ここに咲くバラのことを

あたしは空しく待っていたわ ひそかにそっと
丁寧に織られたあたしのスカーフを引き裂きながら
いつかは炎が吹きだし弾けることを
あの人のダイヤモンドのような心の隙間から

彼は屈服することを恐れている そっと恥ずかしそうに
押し黙って 言葉を返そうとはしない
あたしの愛情が自分をすっかり捕えてしまったことを
そしてあたしのそばではすべてを忘れてしまうということを!


今年(2014年)没後50年を迎えるオーストリアの作曲家ヨーゼフ・マルクス、歌曲の作曲家としてシェーンベルクやベルクの世紀末ウィーンの香りを残しながらも、ロマンティックで美しいメロディで魅力的な作品をたくさん書いています。ドイツリートを愛好する方にとっては決して外せない人だろうということで、恐らく彼の代表作のひとつであろう歌曲集「イタリアの歌の本」を取り上げます。イタリアの民衆詩をパウル・ハイゼがドイツ語に訳したこの詩集はフーゴー・ヴォルフが歌曲集としたものがとても良く知られているでしょうか。マルクスはそこで取り上げられた詩はひとつも選ぶことなく(というよりも選んだほとんどの詩で、曲をつけているのが彼だけのようです)、彼独自のセレクションで17曲からなる歌曲集を組み上げています。
全曲取り上げられることはないでしょうけれども、いくつかのセレクションが録音などで耳にできます。
4年ほど前、メゾ歌手のキルヒシュラーガーがCPOレーベルに「マルクス歌曲集」を入れたものがリリースされ、その中で11曲、この歌曲集から歌われていました。そのあたりも絡めてこの歌曲集を順にご紹介して行きたいと思います。

第1曲目はこのCDの第1曲目に収録されています。歌詞のお茶目さにしてはメロディが地味でちょっと印象が弱いですが、リズムがころころ変わっておどけた感じをところどころ出しているのは面白いです。特に2節目の終わり、恋の炎が噴き上げることを夢想した部分ではピアノが歌にない濃密なロマンティックなメロディを高らかに歌い、それが間奏の間も余韻を残す部分が微笑ましく雄弁です。

( 2014.10.11 藤井宏行 )


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