Songs for Dov |
ドヴの歌 |
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アウー・アウー ワウ・ワウ? アウー アーウー・アーウー アウアウー 大都会に生まれたが 南の国に行こう それともカイフォルニアか 若さと愛のために 「君よ知るや南の国」 昔の有名な歌 馬、空飛ぶ馬ペガサス (または空飛ぶダッチマン) 夕日に向かって駆けて行こう (といった調子で延々冒険が続きます。これも大意のみに止めてあります) |
Nimbusから出ているティペットの自作自演のアルバム、格調の高い弦楽合奏「コレルリの主題によるファンタジア」が終わったあと、けたたましい打楽器とエレキギターの騒ぎの中で、テノールがアウー・ワウワウと犬の遠吠えを始めたのを聴いて、一体何が起こったのかと我が耳を疑いました。ティペットというとかっちりした曲しか知らなかったもので、こんなぶっ飛んだ歌も作曲していたのかと非常に驚かされましたが、結構面白い曲ではあります。
(イギリスの片田舎のブルース・スプリングスティーンといった趣かと...そういえば昔、「田舎のプレスリー」とか歌ってる歌謡曲がありましたね(By吉幾三)。どうでもいいことですけど)
この曲、元はといえば彼のオペラ第3作「ノット・ガーデン(The Knot Garden)」の登場人物、若い音楽家ドヴの遍歴を描写したものを素材にして作り上げたもので、作曲家自身をモデルにしているのだそうです。ゲーテの「ウィルヘルム・マイスター(ミニヨン)」が引用されるかと思えば(ベートーヴェンの曲が顔を出す)、フライングダッチマンでワーグナーのさまよえるオランダ人の一節がホルンで高らかに奏でられるなど、次から次へと繰り出す荒業も面白いのですが、冒頭で出てくる犬の遠吠えが、インパクトでも迫力の上でも群を抜いています。
ナイジェル・ロブソンのテナーに作曲者自身の指揮、スコッティッシュ室内管の演奏(Virgin)しかないのではと思いますが、この犬の遠吠え(なかなか心がこもっていて巧い)を絶唱したテナーに敬意を表して紹介する次第です。
( 1999.11.01 藤井宏行 )