Serenada Don-Zhuana Op.38-1 6 Romansov |
ドンファンのセレナード 6つのロマンス |
Gasnut dal’nej Al’pukhary Zolotistye kraja, Na prizyvnyj zvon gitary Vyjdi,milaja moja! Vsekh,kto skazhet,chto drugaja Zdes’ ravnjaetsja s toboj, Vsekh,ljuboviju sgoraja, Vsekh,vsekh,vsekh zovu na smertnyj boj! Ot lunnogo sveta Zardel nebosklon, O,vyjdi,Niseta,o vyjdi,Niseta, Skorej na balkon! Ot Sevil’i do Grenady, V tikhom sumrake nochej, Razdajutsja serenady, Razdaetsja stukh mechej. Mnogo krovi,mnogo pesnej Dlja prelestnykh l’jutsja dam, Ja zhe toj,kto vsekh prelestnej, Vse,vse,pesn’ i krov’ moju otdam! Ot lunnogo sveta Zardel nebosklon, O,vyjdi,Niseta,o vyjdi,Niseta, Skorej na balkon! |
宵闇が遠くアルカラに この美しい土地に迫ってきた かき鳴らされるギターの調べに おいでよ、愛しいひとよ 他の娘の方が素敵だと言っているやつも お前を天秤にかけているやつも 俺以外にお前に恋焦がれているやつも みんな、みんな、みんな決闘で倒してやる ほら、月は輝き 地平線は真っ赤に染まっている さあ、おいで、ニゼッタ、出ておいで、ニゼッタ そのバルコニーに! セヴィリアからグラナダまで 夜の静けさに包まれている 聞こえるのはセレナードの歌声と 決闘の刃の音だけだ 多くの血と、多くの歌が 美しい貴婦人たちに捧げられてきた 僕もその中で最も美しいお前に みんな、みんな、歌と血のすべてを捧げよう ほら、月は輝き 地平線は真っ赤に染まっている さあ、おいで、ニゼッタ、出ておいで、ニゼッタ そのバルコニーに! |
ロシアの作曲家は、太陽にあふれる南欧の風景への憧れからか、スペインやイタリアを題材とした音楽を良く書いています。
しかし本場の人が書いたものと比較するとやはりどこか違うロシア特有の濃密さが漂ってくるのが面白いところで、チャイコフスキーの書いた、スペインのドンファン伝説を下敷きにしたこのセレナードも、例えば同じシチュエーションで同じキャラによって歌われるモーツアルトのドン・ジョバンニのセレナードの軽やかさに比べると、詩も音楽も本当に重たいです。
花から花へと軽やかに渡り歩く色事師というよりは、真面目一筋の男が恋にはまってストーカーをやっているといった風情で、同じ情熱でもなぜか湿っぽい感じがするのは偏見でしょうか?
ネステレンコ、ホロフトフスキー、サヴェンコなどのロシア系のバス、バリトンの歌うこの曲を聴いているとどうしてもそんな風に感じてしまいます。
ただ、同じバスでもブルガリアのギャウロフの歌うこの曲はドンファンのイメージに近い遊び人の風情があるので、歌手のお国柄というよりもそういう役柄が得意な人かどうかで印象はかなり違ってくるのでしょう。
その意味でとても面白いのはテノールのニコライ・ゲッダの録音、同じスペインが舞台でもカルメンに付きまとうドン・ホセのような熱くしつこい歌を聴かせてくれます。
1878年作のOp.38の第一曲。この歌曲集は傑作が多く、彼の歌曲の中でも非常に多く取り上げられるものが集中しています。
( 2003.11.22 藤井宏行 )