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Über den Bergen    
  Jugendlieder,Vol. II
山のかなたに  
     若き日の歌 第2巻

詩: ブッセ (Karl Hermann Busse,1872-1918) ドイツ
      

曲: ベルク (Alban Maria Johannes Berg,1885-1935) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Über den Bergen,
weit zu wandern,sagen die Leute,
wohnt das Glück.
Ach, und ich ging,
im Schwarme der andern,
kam mit verweinten Augen zurück.
Über den Bergen,
weit, weit drüben, sagen die Leute
wohnt das Glück.
山の向こう
ひたすら歩いたところに、人が言うには
幸せが住んでいるんだそうな
ああ、そこで私は出かけた
大勢の仲間と一緒に、
目に涙をいっぱい溜めて帰ってきた。
山の向こう
もっと、もっと遠くに、人が言うには
幸せが住んでいるんだそうな

下手な翻訳をしたために非常にマヌケな香りを漂わせてしまう詩になってしまいましたが、これはかの明治期の翻訳詩集「海潮音」での上田敏の名訳のある「山のあなたの空遠く」なんですね。今回ドイツ語の原詩を初めて見る機会を得ましたが、よもやそれがアルバン・ベルクの歌曲集の中でとは思いませんでした。
これはあまり録音の多くない、作品番号もついていない初期の作品群(Jugendlieder)の中の一曲なのですが(他にゲーテのミニヨン「君よ知るや南の国」などもあって面白い)、他の若書のとろけるような旋律美はあまり感じられず、最初から最後まで執拗に同じリズムを繰り返すピアノ伴奏にまとわりつくような息の長い歌は最後も消え入るように終わります。音楽だけ取るとさほど印象的なものではないのですが、詩との取り合わせが余りに興味深いので思わず取り上げてしまいました。
(確かベルクは、これら若書の曲の出版は禁止していたのを、最近無理矢理出版したのでしたね)
こういう息の長い包み込むような歌は、白井光子さんの声には打ってつけです(Capriccio)。この曲よりもうちょっとロマンティックでひたすら甘い「7つの初期の歌」などピアノの熱演と共に思わず聴き惚れてしまいました。
他にはこのJugendliedの録音、そんなに多くないようなのでこのCDはなかなか貴重です。

( 1999.12.02 藤井宏行 )


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