In dem Schatten meiner Locken Op.6-3 Sieben spanische Lieder |
私の髪の陰で 7つのスペイン歌曲 |
In dem Schatten meiner Locken Schlief mir mein Geliebter ein. Weck ich ihn nun auf? - Ach nein! Sorglich strählt ich meine krausen Locken täglich in der Frühe, Doch umsonst ist meine Mühe, weil die Winde sie zerzausen. Lockenschatten,Windessausen Schläferten den Liebsten ein. Weck ich ihn nun auf? - Ach nein! Hören muß ich,wie ihn gräme, Daß er schmachtet schon so lange, Daß ihm Leben geb' und nehme Diese meine braune Wange, Und er nennt mich eine Schlange, Und doch schlief er bei mir ein. Weck ich ihn nun auf? - Ach nein! |
私のカールした髪の陰で 私の恋人は眠っている 起こしちゃおうかな? いえ、やめとこう! 毎朝、私は丁寧にとかすの このカールした髪の毛を でもそうしても無駄かしら 風がすぐに乱してしまうのだから 髪の毛が作る陰とそよ風のおかげで 私の恋人は眠ってしまった 起こしちゃおうかな? いえ、やめとこう! 私はいつも聞かされなきゃならない 彼がどんなに恋焦がれてつらいか、だとか どんなに長いこと苦しんでいるか、とか 自分の人生がどれだけ私のこの小麦色の頬にかかっているとか 私のことを「ヘビちゃん」なんていうのを。 なのに今、彼は私のそばで気持ちよく眠っている 起こしちゃおうかな? いえ、やめとこう! |
これはヴォルフのスペイン歌曲集でも可愛らしい詩と素敵なメロディで特に印象に残る作品です。この詩にはブラームスも曲を付けているようですが、今回は北欧の歌曲大特集に絡めてスウェーデンのエミル・シェーグレンのものを取り上げて見ます。
彼は1853年生まれ、1918年没ですからほとんどヴォルフと同時代人、しかしながらスウェーデンという音楽的辺境(といったら叱られるかな?)にいたせいか作風は非常に保守的で、シューマンのスタイルを思わせる清新な曲を書いた人です。ドイツ語の詩につけた歌曲が非常に多いので、知られざるドイツリートの巨匠と呼んでも良いかも。
そんな彼が1881年、このハイゼやガイベルの手になるスペイン詩集をもとにヴォルフと同じようにスペイン歌曲集を作曲したものは、清楚な音楽でありながらスペインの明るい日差しと自然、それに陽気な人々を描いた不思議な雰囲気を漂わせています。ヴォルフのものと詩が重複するのはこの曲のみのようですが、スペインのセレナード風の仄かに情熱的な旋律を伴奏に匂わせながら歌は実に端正。ヴォルフの曲のようなお茶目さはあまりないですが、代わりになんともいえない初々しさがあります。
Bluebellレーベルにあるシェーグレン歌曲集は、ニコライ・ゲッダの名唱もあり、ぜひ耳にして欲しいCDですが、この中でこれを含むスペイン歌曲集はマルガレータ・ハーリンのソプラノで歌われています。他に録音があるかどうかは分かりませんが、ヴォルフのを聴くついでにこちらにも手を伸ばしてみてはいかがでしょう。
( 2004.06.10 藤井宏行 )