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I Danmark    
 
デンマークに  
    

詩: アンデルセン (Hans Christian Andersen,1805-1875) デンマーク
      Danmark,mit Fædreland (1850)

曲: シアベク (Paul Schierbeck,1888-1949) デンマーク   歌詞言語: デンマーク語


I Danmark er jeg født,der har jeg hjemme,
Der har jeg rod,derfra min verden gaaer,
Du danske sprog,du er min moders stemme.
Saa sødt og velsignet du mit hjerte naaer.
Du danske friske strand,
Hvor oltids kjæmpegrave
Staar mellemÆ blegaard og humlehave,
Dig elsker jeg! - Danmark,mit fædreland!

Hvor reder sommeren vel blomstersengen
Meer rigt end her,ned til den aabne strand?
Hvor staaer fuldmaanen over kløver-egnen
Saa dejlig,som i bøgens fædreland?
Du danske friske strand,
Hvor danebrogen vaier,
Gud gav os den - Gud giv den bedste seier!-
Dig elsker jeg! - Danmark,mit fædreland.

Engang du herre var i hele Norden,
Bød over England - nu kaldes du svag,
Et lille land,- og dog saa vidt som jorden
End høres danskens sang og meiseslag.
Du danske friske strand,
- Plovjernet guldhorn finder.
- Gud giv dig fremtid,som han gav dig minder,
Dig elsker jeg! - Danmark,mit fædreland.

Du land,hvor jeg blev født,hvor jeg har hjemme,
Hvor jeg har rod,hvorfra min verden gaaer,
Hvor sproget er min moders bløde stemme.
Og som en sød musik mit hjerte naaer.
Du danske friske strand,
Med vilde svanes rede,
I grønne øer,mit hjertes hjem hernede,
Dig elsker jeg! - Danmark,mit fædreland!

デンマークに生まれ、ここに暮らす
ここに根を生やし、ここから世界が広がる
デンマーク語よ、母の言葉よ
甘く、優しく、私の心に響く
デンマークの風吹きすさぶ海岸よ
いにしえの遺産が
リンゴ畑と麦畑の間に立つ
うるわしき国、デンマーク、わが祖国

夏には美しい花で野原はいっぱいになる
この海辺で寝そべろうか?
満月がクローバーの野原を照らし、
ブナの林は輝いている
デンマークの風吹きすさぶ海岸よ
十字の国旗のはためくところ
神がわれらに賜った旗だ。神が敵を打ち破らせて下さったのだ
うるわしき国、デンマーク、わが祖国

かつて祖国はスカンジナビアに君臨し
イングランドすら従えていた。今はつつましく
小さな国だけれど、なおもこの地のいたるところで
歌声と槌音はあふれる
デンマークの風吹きすさぶ海岸よ
耕す鋤が黄金の宝を掘り出し
神はわれらに未来をくださる、過去がそうであったように
うるわしき国、デンマーク、わが祖国

この国に生まれ、ここに暮らす
ここに根を生やし、ここから世界が広がる
その言葉は母のやわらかい声
私の心に響く優しい調べ
デンマークの風吹きすさぶ海岸よ
野生の白鳥の住むところ
緑の島々、そこが心安らぐところ
うるわしき国、デンマーク、わが祖国

1850年、デンマークとドイツが戦争をしていたときに書かれた、アンデルセン童話で有名な文学者の詩です。そんなわけでか美しい自然や文化を歌いながらも非常に愛国的な情熱がにじみ出ています。最後のフレーズは直訳すると、
   Dig elsker jeg! - Danmark, mit fadreland! 私は愛する!- デンマークよ、我が父なる国!
なのですが、日本人の感覚ではちょっと強すぎる感情表現のような気がするのでもう少しやんわりと訳してみました。

作詞されたのと同じ年に、ロング(Henrik Rung 1807-1872)という作曲家が付けた曲があり、当時の愛国歌のようになっていたのだそうですが、ここではそれよりも後年の世代の作曲家 ポール・シアベクの付けた作品を取り上げてみます。このような内容の詩であるにも関わらず清楚で淡々とした美しい曲想のこの歌は、一度聴いたら耳から離れなくなってしまいました。
シアベクは1888年の生まれですから、ストラヴィンスキーやウェーベルンよりもちょっとあとの世代になります。が、彼の歌曲集を聴いてみると、まるでモーツァルトの作品のようなシンプルで楚々とした美しいメロディがあふれていておやっと思わされます。
素朴というよりは端正で美しいそのメロディ、時代錯誤と切って捨てるには惜しいその味わいです。合唱曲にもなっているようですが、まさに至福の味わい。
シアベクの作品では管弦楽伴奏の歌曲集「中国の笛」が有名なようですが、この色彩感あふれる大オーケストラ伴奏の歌曲作品は彼の資質とはちょっと違うような気もします。
やはりピアノ伴奏でつつましやかに歌われる歌曲集(Dacapo 8.224017)のボンデ?ハンセンの清楚なソプラノ、テグルビェイのピアノ伴奏で、この北欧のモーツアルトのような歌の数々を味わうのが素敵ではないかと思います。

( 2004.05.31 藤井宏行 )


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