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De tous les printemps du monde   FP 120  
  Figure humaine
この世のすべての春の中で  
     人間の顔  

詩: エリュアール (Paul Éluard,1895-1952) フランス
    Poésie et vérité (1942)  De tous les printemps du monde

曲: プーランク (Francis Poulenc,1899-1963) フランス   歌詞言語: フランス語


De tous les printemps du monde,
Celui-ci est le plus laid
Entre toutes mes façons d'être
La confiante est la meillure

L'herbe soulève la neige
Comme la pierre d'un tombeau
Moi je dors dans la tempête
Et je m'éveille les yeux clairs

Le lent le petit temps s'achève
Où toute rue devait passer
Par mes plus intimes retraites
Pour que je rencontre quelqu'un

Je n'entends pas parler les monstres
Je les connais ils ont tout dit
Je ne vois que les beaux visages
Les bons visages sûrs d'eux mêmes

Sûrs de ruiner bientôt leurs maîtres

この世のすべての春の中で
今年は最も醜い春だ
私のあらゆる生き方の中では
信頼することが最も素晴らしい

草が雪を持ち上げる
まるでそれが墓石であるかのように
だが私は嵐の中で眠り
そして輝く目をして目覚める

ゆっくりした短い時間が終わる
そこではすべての道が通らねばならないのだ
私の最も大切な秘密の中を
私が誰かに出会うためには

私には聞こえない 怪物どもが言っていることを
私は奴らを知っている 奴らは全てを喋ったのだ
私は美しい顔しか見ない
自分自身を真に知る善き顔だけを

きっともうすぐだ 彼らの支配者どもが滅びるのも


アカペラの混声合唱でプーランクはいくつもの傑作を残しましたが、これはその中でも最も素晴らしい作品ではないでしょうか。1943年という第二次大戦真っただ中の時期に、対独レジスタンスにも参加していた詩人エリュアールの詩につけた一連の曲は鬼気迫るような壮絶さで聴き手に迫って参ります。詩は例によって非常に難解ですのでうまく訳せるかどうか自信はないのですが、エリュアール&プーランクの作品群の中でこれを取り上げない訳には参りませんので、無茶を承知で訳詞を順次アップしていきます。

第1曲は、男声の導入で聖歌のように厳かに始まりますが、「最も醜い le plus laid」のところで怒りの感情が爆発します。最初の2行を今度は女声で繰り返しますのでこのle plus laidはいやでも心に残ります。そこからは音楽は内省的に、透明な美しさを響かせながら流れて行きますが、底には怒りがふつふつとたぎっているようです。最後の「彼らの支配者が leurs maîtres」は再び力強さを見せて曲を閉じます。

( 2014.04.05 藤井宏行 )


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