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O Mistress Mine    
 
ねえ、僕の恋人  
    

詩: シェイクスピア (William Shakespeare,1564-1616) イングランド
    Twelfth Night (十二夜) Act.2 Scene.3 O mistress mine

曲: サマヴェル (Arthur Somervell,1863-1937) イギリス   歌詞言語: 英語


O mistress mine,where are you roaming?
O stay and hear! your true-love's coming
That can sing both high and low;
Trip no further,pretty sweeting,
Journey's end in lovers' meeting?
Every wise man's son doth know.

What is love? 'tis not hereafter;
Present mirth hath present laughter;
What's to come is still unsure:
In delay there lies no plenty,?
Then come kiss me,Sweet and twenty,
Youth's a stuff will not endure.

ねえ、僕の恋人、どこへ行くんだ
待って、聴いて、せっかく僕が来たんだから
高い声でも低い声でも歌ならお手の物
もうどこへも行かないで、かわいい人
旅の終わりは恋人たちの出会いだと、
賢い人はみんな知っているのだから

恋って何だい? 今この時だけのもの
今の笑顔が今の喜び
明日は誰にも分からないのだから
ぐずぐずしていちゃ何もできない
だからキスしておくれ、甘く、何度も
若い時はただ一度、長くは続かないのさ

シェイクスピアの喜劇の中でも一番ロマンティックなお話「十二夜」は、嵐で船が難破し、離れ離れになった双子の兄妹がそれぞれ幸せを見つけて最後に再会するまでの一騒動を描いています。この劇で重要な役割を果たしているのが道化師のフェステ、彼は重要な歌を2つ歌います。ひとつは「Come Away Death(来れ、死よ)」という有名な歌、そしてもうひとつはお話が大団円を迎えたあとに、しみじみと人生のほろ苦さを歌う「おいらが小さい子供の頃は」幸福感で満ち溢れているこのお芝居の中で、唯一翳りを見せる表情を、普段は与太者たちとばか騒ぎをしているこの道化師が見せるのは何とも意味深い話ではあります。

この2曲はシベリウスの作品が結構味わいがあるので(スウェーデン語ですが)いずれご紹介するとして、今回はこの道化師が与太者たちと騒いでいるときに歌うこの歌をご紹介しましょう。ばか騒ぎとはいえこの歌にもそこはかとない翳りがあり、事実そんな感じで作曲している人もいます。

クィルターやヴォーン・ウイリアムス、ウォーロックにフィンジと、近代イギリスの歌曲作曲家たちの競作が聴けるこの詩ですが、これを一番美しく、濃密な愛の歌にしているサマヴェルの作品が私は一番気に入っています。舞台のばか騒ぎではなくて、窓辺で歌うセレナードのような甘く、優しい歌です。リヒャルト・シュトラウスの歌曲の伴奏のような、これまた濃厚なピアノ伴奏の上で朗々と歌われるのは、やはりちょっとこの爽やかな喜劇には濃すぎるかも知れませんが、愛の歌としては実に魅力的です。

サマヴェルはイギリス歌曲作曲家としては重要な人で、有名なハウスマンの連作詩集「シュロップシャーの若者」に付けた曲や、テニスンの物語詩「モード」による連作歌曲集などで知られています。典型的なイギリスの歌曲というのはこの人の曲をいうのではないかと思うくらいイギリス民謡風の味付けが好ましく、強烈な個性はありませんが実に安心して美しいメロディに浸ることができます。Collinsレーベルのイギリス歌曲集で、ロザリオ(Sop)・ウイン?ロジャース(MS)・モルトマン(Br)にグレアム・ジョンソンのピアノ伴奏による素晴らしいサマヴェル歌曲集がありました。今はNAXOSで続々と復刻リリースされている英国歌曲シリーズで早くも第2集として出されていますので、この人のイギリス歌曲における位置付けの高さも分かろうというものです。 このシェイクスピアによる歌曲はCDの第1曲目、モルトマンのバリトンで歌われています。

( 2003.04.18 藤井宏行 )


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