Shine onne ekashi kor shinotcha アイヌの叙事詩による対話体牧歌 |
或る古老の唄った歌 |
ohu ohu ohu ehu ehu ehu teeta kane upen-ash ita peure-ash ita ohu ohu ohu ehu ehu ehu peure totto ka chi-tekpare chi-tekkoshiru ene hetapne chi-enupetne humi okai awa |
オフ オフ オフ エフ エフ エフ そのかみ 我若く 元気なりし頃 オフ オフ オフ エフ エフ エフ 若き乳房をも 手に取りて もてあそび いとしも 楽しき 思ひありしに (知里 真志保 訳) |
北海道生まれの伊福部はかの地、そして更にはそれよりも北のサハリンまで広がった音楽世界を築いています。それは彼が村長となって十勝地方・音更村に赴任した父について9歳から12歳までアイヌたちとも身近に接することのできる地に暮らしたことがあることが重要でしょう。
1956年に彼はそんなアイヌの古謡の詩(テキストはアイヌ言語の研究者・知里 真志保の集めたもの)3篇にとても印象的な音楽を付けました。
ソロの女声になんとこの曲はティンパニの伴奏が付くのですが、それがアイヌ語の優しい響きと溶け合って何とも言えない不思議な効果を生み出しています。(もともとはコンガの伴奏で音階を鳴らすことを作曲者は考えていたようですが、演奏困難なためティンパニーに変更されたとのことです その方が結局表現力の点でも却って良かったように私には思えます)
第1曲目は、老女が若き日を懐かしんで歌ううたです。冒頭の重々しいティンパニの連打に続いて祝詞のような意味不明の叫び(実際に意味はないのだそうです)がしばらく続き、それからリズミカルな歌声が調子の良いティンパニと掛け合いながら流れ出します。「嘆きの歌」という解説もありましたが、もっとほんのりとした回想でしょうか。中間部では激しいティンパニのソロが炸裂します。
( 2014.02.11 藤井宏行 )