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Before life and after   Op.52-8  
  Winter Words
生命の前と後  
     冬の言葉

詩: ハーディ (Thomas Hardy,1840-1928) イングランド
    3.Time's Laughingstocks and Other Verses 230 Before life and after

曲: ブリテン (Edward Benjamin Britten,1913-1976) イギリス   歌詞言語: 英語


A time there was - as one may guess
And as,indeed,earth's testimonies tell -
Before the birth of consciousness,
When all went well.

None suffered sickness,love,or loss,
None knew regret,starved hope,or heart-burnings;
None cared whatever crash or cross
Brought wrack to things.

If something ceased,no tongue bewailed,
If something winced and waned,no heart was wrung;
If brightness dimmed,and dark prevailed,
No sense was stung.

But the disease of feeling germed,
And primal rightness took the tinct of wrong;
Ere nescience shall be reaffirmed
How long,how long?

そんな時代があった 皆が想像するように
そしてまた きっと この世の教えが述べているように
意識というものが生まれる前に
すべてがうまくいっていた時が

誰も苦しまなかったのだ 病に、愛に 喪失に
誰も知らなかったのだ 後悔を 飢えた希望を 嫉妬を
誰も気にかけなかった いかなる破壊や試練が
物事を破滅へと導こうとも

もし何かが終わっても 誰の舌も嘆きを発することなく
もし何かがたじろぎ衰えても 誰の心も痛まなかった
もし明るさが衰え 闇が広がっても
誰の感覚も刺されることはなかった

だが 感情という病が発生して
当初の正義は悪の色に染まってしまった
あの無垢さが再び認められるようになるまでには
あとどのくらい どのくらいかかるのか?


聖書のアダムとイブの物語、禁断のリンゴを食べてしまったばかりに「意識」というものが生まれてしまい、すべての不幸が一緒に生じてしまったところを思い出しました。清々しささえ感じさせる静かな音楽はそれを達観しているかのようです。この静けさは決してその「意識以前の昔」に思いを馳せているものではないはずです。最後は力強く盛り上がってしみじみと曲を閉じます。なかなかに感動的な幕切れ。

( 2014.01.11 藤井宏行 )


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