At the railway station,Upway Op.52-7 Winter Words |
アップウェイの停車場で 冬の言葉 |
“There is not much that I can do, For I've no money that's quite my own!” Spoke up the pitying child - A little boy with a violin At the station before the train came in,- “But I can play my fiddle to you, And a nice one 'tis,and good in tone!” The man in the handcuffs smiled; The constable looked,and he smiled,too, As the fiddle began to twang; And the man in the handcuffs suddenly sang With grimful glee: “This life so free Is the thing for me!” And the constable smiled,and said no word, As if unconscious of what he heard; And so they went on till the train came in - The convict,and boy with the violin. |
「ぼくにできることは何もないんだ だって自分で使えるお金が全然ないんだから」 同情したその子どもは声を張り上げた ヴァイオリンを持った小さな男の子が 列車がやって来る前の停車場で 「だけどぼく ヴァイオリンなら弾いてあげられるよ すてきな曲をね 音もきれいさ!」 手錠を掛けられていた男は微笑んだ 警官はそれを見たが 彼もまた微笑んだ ヴァイオリンが音を立て始めた時に すると手錠を掛けられた男は突然歌い始めた 厳然とした陽気さで 「この自由な人生は 俺のためのものだ!」 警官は微笑んで何も言わなかった まるで自分の聞いたことに全く気が付かなかったように こうして彼らは列車が入って来るまで続けていた- 囚人とヴァイオリンを持った少年は |
第6詩集 近作・旧作抒情詩 よりの詩です。神妙な合いの手を入れるピアノと掛け合いながら訥々と語る歌声、ただ囚人が朗々と歌う場面では歌声もピアノも力強く朗々と演奏します。再び初めの静けさが戻ってきて、曲は消え入るように終わって行くのでした。これもまたドラマのワンシーンを描写したかのような味わい深い一品です。
( 2014.01.04 藤井宏行 )