Wagtail and Baby Op.52-3 Winter Words |
セキレイと赤ん坊 冬の言葉 |
A baby watched a ford,whereto A wagtail came for drinking; A blaring bull went wading through, The wagtail showed no shrinking. A stallion splashed his way across, The birdie nearly sinking; He gave his plumes a twitch and toss, And held his own unblinking. Next saw the baby round the spot A mongrel slowly slinking; The wagtail gazed,but faltered not In dip and sip and prinking. A perfect gentleman then neared; The wagtail,in a winking, With terror rose and disappeared; The baby fell a-thinking. |
ひとりの赤ん坊が浅瀬を見ていた そこに 一羽のセキレイが水飲みにやってきた モウモウ鳴く雄牛が横切って行ったが セキレイは驚いた様子は見せなかった 種馬がしぶきを上げて駆け抜けて行った 小鳥はほとんど沈みそうになったが 羽根を上下にぴくつかせて たじろぐこともなかった 次にその赤ん坊は見た あたりを 雑種の犬がそっと忍び歩いているのを セキレイはじっと見つめたが ためらうことはなかった 水に浸かり 水を飲み 羽根つくろいすることを ひとりの完璧な紳士がそこへやってきた セキレイはあっという間に 恐れおののいて舞い上がり 姿を消した 赤ん坊は考え込んで倒れてしまった |
第3曲目は教訓めいた詩、もっともありがちなストーリーなのでそれほどのインパクトは感じません。階級社会のイギリスですから、完璧な身なりの紳士というのは牛や馬や雑種犬と比べるべくもないのですが、セキレイの目からはそのような犬畜生にも劣る邪悪な生き物であるということ、そしてそのような生き物界の道理を人間の赤ん坊が観察し、そして考え込んだあまりに転倒してしまうというのは何とも面白いところではありますが...
詩はハーディの第3詩集「時の笑いぐさ」より。ブリテンが取り上げた8篇の詩の中では一番初期のものに当たります。
鳥のさえずりを表しているのでしょうか、軽やかに歌うピアノの音に乗せて快調に飛ばす歌は、紳士の登場と共に重々しくなり、最後はたどたどしく終わります。まるでこの赤ん坊の歩みのように。
( 2013.12.07 藤井宏行 )