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Midnight on the Great Western   Op.52-2  
  Winter Words
真夜中の大西部鉄道  
     冬の言葉

詩: ハーディ (Thomas Hardy,1840-1928) イングランド
    5.Moments of Vision and Miscellaneous Verses 465 Midnight on the Great Western

曲: ブリテン (Edward Benjamin Britten,1913-1976) イギリス   歌詞言語: 英語


In the third-class seat sat the journeying boy,
And the roof-lamp's oily flame
Played down on his listless form and face,
Bewrapt past knowing to what he was going,
Or whence he came.

In the band of his hat the journeying boy
Had a ticket stuck; and a string
Around his neck bore the key of his box,
That twinkled gleams of the lamp's sad beams
Like a living thing.

What past can be yours,O journeying boy
Towards a world unknown,
Who calmly,as if incurious quite
On all at stake,can undertake
This plunge alone?

Knows your soul a sphere,O journeying boy,
Our rude realms far above,
Whence with spacious vision you mark and mete
This region of sin that you find you in,
But are not of?

三等車の座席に旅する少年が座っていた
天井のランプの油の炎が
彼の物憂げな姿や顔の上で揺らめいている
だれが知るというのか 彼がどこへ行くのか
そしてどこから来たのかを?

帽子のバンドに その旅する少年は
切符を挟んでいた そして紐に
彼のスーツケースの鍵を付けて首にかけていた
ランプの悲しげな光線のちらつく輝きは
まるで生き物のようだった

いったいどんな過去がお前のものであったのか
おお旅する少年よ
見知らぬ世界へと向かって行く
こんなにも穏やかに まるで人ごとのように
こんな賭けに たったひとりで飛び込むとは?

お前の魂はあの天球を知っているのだな 旅する少年よ
我らの粗野な世界のはるか上にあって
そこからお前が広大な視野で見下ろし測っているところ
この罪に満ちたこの世を お前がたまたま居るけれども
お前はその一員ではないこの世のことを


第5詩集「映像の見える時」より。疾走する列車の低い振動がピアノ伴奏に持続して響く中、おどけたような、しかし重々しい歌声がこの一人旅の少年のことを描写します。非常に鮮烈な視覚的な詩はハーディお得意のところ、最後は遠い世界にまで想いを馳せながら、いつ終わるとも知れぬ夜の旅は続いて行きます。

( 2013.11.30 藤井宏行 )


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