Waldsonne Op.2-4 4 Lieder |
森の日差し 四つの歌 |
In die braunen,rauschenden Nächte Flittert ein Licht herein, Grüngolden ein Schein. Blumen blinken auf und Gräser Und die singenden,springenden Waldwässerlein, Und Erinnerungen. Die längst verklungenen: Golden erwachen sie wieder, All deine fröhlichen Lieder. Und ich sehe deine goldenen Haare glänzen, Und ich sehe deine goldenen Augen glänzen Aus den grünen,raunenden Nächten. Und mir ist,ich läge neben dir auf dem Rasen Und hörte dich wieder auf der glitzeblanken Syrinx In die blauen Himmelslüfte blasen. In die braunen,wühlenden Nächte Flittert ein Licht, Ein goldener Schein. |
茶色くざわめく夜、 一筋の光が差しこんでくる。 輝く緑色の光が。 花もきらめき、そして草も、 歌うように、跳ねるように小川はせせらぐ そして思い出も。 長いこと消え去っていたもの 金色に再び目覚めるもの みなあなたの喜びの歌だ そして私はあなたの美しい髪の輝きをみつめ あなたの美しい瞳の輝きをみつめる。 緑色にざわめく夜の中で 草の上、あなたのそばに横たわり あなたの吹くきらめく葦笛の音を 青空に聞く。 茶色くざわめく夜、 一筋の光が差しこんでくる。 輝く緑色の光が。 |
シェーンベルク最初期の作品は、「浄夜」で聴けるようにとろけるような甘いロマンティシズムに溢れていると思いますが、私はその中でもご紹介した曲を含む4つのリート(Op.2)が特に気に入っています。同じ時期のヴォルフやマーラーのように美しいけれどもどこか濃い情念がたぎっている音楽とも違い、R・シュトラウスの音楽のような雄弁な美しさとも違う (雰囲気は凄くよく似ているのですが、何か違うのです) どこか触るとすぐ壊れてしまいそうなガラス細工のような、透明でいともはかない味わいがなんとも言えません。中でも4曲目のこの曲、ピアノ伴奏の旋律がやさしく降り注ぐ日の光を表現するなか、ためらいがちに歌う声が溜息の出るような絶妙な掛け合いを聴かせてくれて私は一番のお気に入りです。
ピアノの後奏が、途絶えがちに消え入っていくまで息もつかせぬ美の極致と言っても過言ではなく、熟しきったロマン派音楽のひとつの極限がここにあると言い切ってしまいましょう。
ルチア・ポップがBMG/RCAに録音した「ユーゲント・シュティール時代の歌曲集」というCDでこれは初めて聴いたのですが、このシェーンベルクを私は何回繰返し聴いたかわかりません。あの人の声はR・シュトラウスなどで定評のあるところですが、それはこの中に収録されているベルクやプフィッツナーに対しても同じこと。もしかすると彼女の遺した最高傑作かも知れません。
やはりこういうガラス細工のような曲は、透明で美しいソプラノで聴くのが一番と思ってしまいます。
( 1999.05.18 藤井宏行 )