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Blümlein Vergißmein    
  Die schöne Müllerin
忘れて草の花  
     美しき水車小屋の娘

詩: ミュラー,ヴィルヘルム (Johann Ludwig Wilhelm Müller,1794-1827) ドイツ
    Die schöne Müllerin 21 Blümlein Vergißmein

曲: シューベルト (Franz Peter Schubert,1797-1828) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Was treibt mich jeden Morgen
So tief in's Holz hinein?
Was frommt mir,mich zu bergen
Im unbelauschten Hain?

Es blüht auf allen Fluren
Blümlein Vergiß mein nicht,
Es schaut vom heitern Himmel
Herab in blauem Licht.

Und soll ich's niedertreten,
Bebt mir der Fuß zurück,
Es fleht aus jedem Kelche
Ein wohlbekannter Blick.

Weißt du,in welchem Garten
Blümlein Vergiß mein steht?
Das Blümlein muß ich suchen,
Wie auch die Straße geht.

'S ist nicht für Mädchenbusen,
So schön sieht es nicht aus:
Schwarz,schwarz ist seine Farbe,
Es paßt in keinen Strauß.

Hat keine grüne Blätter,
Hat keinen Blüthenduft,
Es windet sich am Boden
In nächtig dumpfer Luft.

Wächst auch an einem Ufer,
Doch unten fließt kein Bach,
Und willst das Blümlein pflücken,
Dich zieht der Abgrund nach.

Das ist der rechte Garten,
Ein schwarzer,schwarzer Flor:
Darauf magst du dich betten --
Schleuß zu das Gartenthor!

何がぼくを毎朝引き寄せるのだろう
こんなに森の奥深くに
何の役に立つというのだろう ぼくを隠すなんて
この何も聞こえない森の中に

あらゆる野原の上には咲いている
忘れな草の花が
明るい空の下で見えるのは
降り注ぐ青い光

そしてぼくがその花を踏みつけて行こうとしても
ぼくは足が震えてそれができないのだ
だってひとつひとつの花から訴えかけているのだから
懐かしいあのまなざしが

君は知ってるかい どこの庭に
忘れて草の花が咲いてるのかを?
その花をぼくは探さなくちゃならないんだ
どこの道に向かうことになったとしても

それは乙女の胸を飾るための花じゃない
そんなに美しい花には見えないのだ
黒い 黒い色をしていて
どんな花束にも合わない

緑の葉も付いてなければ
花の香りもしない
這いつくばっているのだ 地面の上の
夜の湿っぽい空気の中

岸辺に生えているけれども
その下に小川は流れていない
その花を摘もうとしたならば
君を深淵が引きずり込むだろう

それこそがまさにぴったりの庭だ
真っ黒な 真っ黒な花畑
その上に君は自分の身を横たえて
閉ざしてしまえ その庭の門を


恐らくこの「水車小屋の娘」の中で一番ダークな詩ではないでしょうか。ここに描かれた花の色同様のどす黒い情念が渦巻いていてちょっとこの全体の詩集の中でも異質な感じです。
「忘れて草」というのは「忘れな草」にかけたミュラーの創作でしょう。しかし幻にしても随分恐ろしげなイメージです。もしこの詩もシューベルトの歌曲集に含まれていたならばずいぶんと全体の印象が変わったであろうほどの。
ということで、この詩は歌曲集からは省かれてしまいましたが、単独の歌曲としてシューベルトにはぜひ作曲して欲しかった、そんな風に思わせる強烈なオーラを放つ詩ではあります。

( 2013.09.14 藤井宏行 )


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