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Pause   Op.25 D 795  
  Die schöne Müllerin
休息  
     美しき水車小屋の娘

詩: ミュラー,ヴィルヘルム (Johann Ludwig Wilhelm Müller,1794-1827) ドイツ
    Die schöne Müllerin 14 Pause

曲: シューベルト (Franz Peter Schubert,1797-1828) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Meine Laute hab ich gehängt an die Wand,
Hab sie umschlungen mit einem grünen Band -
Ich kann nicht mehr singen,mein Herz ist zu voll,
Weiß nicht,wie ich's in Reime zwingen soll.
Meiner Sehnsucht allerheißesten Schmerz
Durft ich aushauchen in Liederscherz,
Und wie ich klagte so süß und fein,
Glaubt ich doch,mein Leiden wär nicht klein.
Ei,wie groß ist wohl meines Glückes Last,
Daß kein Klang auf Erden es in sich faßt?

Nun,liebe Laute,ruh an dem Nagel hier!
Und weht ein Lüftchen über die Saiten dir,
Und streift eine Biene mit ihren Flügeln dich,
Da wird mir so bange,und es durchschauert mich.
Warum ließ ich das Band auch hängen so lang?
Oft fliegt's um die Saiten mit seufzendem Klang.
Ist es der Nachklang meiner Liebespein?
Soll es das Vorspiel neuer Lieder sein?

自分のリュートをぼくは壁に掛け
それを緑のリボンで飾り付けてみた
ぼくはもう歌えない 心が一杯になってしまって
分からないんだ どうやって詩を綴ったらいいのかが
ぼくの憧れの一番熱い苦しみを
ぼくは吹き込むことができた 歌の苦しみの中に
そして嘆いてきたのだ こんなにも甘く こんなにも細やかに
ぼくは思い込んでいた この苦悩は小さなものではないだろうと
ああ なんて大きいんだ ぼくの幸福の重荷は
この世のどんな音もそれを表すことのできないほどの

さあいとしのリュートよ この釘の上で休んでいろ
そしてそよ風がお前の弦の上を吹きぬけるときには
そしてミツバチがその羽根でお前に触れるときには
ぼくを不安にさせ ぼくをドキドキさせるのだろう
どうしてぼくはこのリボンをこんなに長く垂らしてしまったのか?
時折それは揺らいで弦のまわりでため息のような音を立てる
それはぼくの愛の苦しみのこだまなのだろうか?
それとも新しい歌の始まりなのだろうか?


恋が成就した満足感を、今度は穏やかなメロディに乗せてつぶやきます。伴奏のたゆたうようなメロディは、壁に掛けられたリュートに付けられた緑のリボンが風に揺れて弦にそっと触れ、穏やかな音を立てているのを描写しているのでしょう。夢見心地のような幸福感がそれで絶妙に表現されておりますが、同時にどこか心もとない不安感もにじみ出て、なんとも不思議な音楽になっています。

( 2013.07.20 藤井宏行 )


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