Mein! Op.25 D 795 Die schöne Müllerin |
ぼくのものだ! 美しき水車小屋の娘 |
Bächlein,laß dein Rauschen sein! Räder,stellt euer Brausen ein! All ihr muntern Waldvögelein, Groß und klein, Endet eure Melodein! Durch den Hain Aus und ein Schalle heut ein Reim allein: Die geliebte Müllerin ist mein! Mein! Frühling,sind das alle deine Blümelein? Sonne,hast du keinen hellern Schein? Ach,so muß ich ganz allein Mit dem seligen Worte mein Unverstanden in der weiten Schöpfung sein! |
小川よ 勝手にざわめいていろ 水車よ さあ回るのをやめろ お前たち陽気な森の鳥よ 大きいのも小さいのも 止めるんだ お前たちのメロディを 林を抜けて 出たり入ったりしながら 響かせてくれ 今日はひとつの歌だけを 大好きなあの水車屋のあの子はぼくのものなんだ! ぼくのもの! 春よ、これがお前の花のすべてなのか? 太陽よ お前はこれ以上明るくは輝かないのか? ああ こうしてぼくはひとりぼっちでいなくてはいけないのか この至福の言葉 「ぼくのもの」を抱いて 理解されることもなく この広い世界の中に |
前の曲ではしらっとした雰囲気が一抹の不安をかき立てたのではありますが、この曲では一転して娘の心を得た喜びが爆発しています。
一体この間に何があったのか、詮索するのは野暮というものですね。彼は娘から前向きな返事を得た。その喜びを声を限りに歌います。
勝ち誇った叫びがリズミカルなメロディに乗って歌われる前半部、中間部分は“Main”の繰り返しでやや穏やかに、そして陰りを帯びています。それは充足感というよりは何やら不安な心持ちのよう、もしかするとこの喜びも束の間で終わるかも知れないという思いが隠れているのでしょうか。少なくとも歌われているように、彼にはこの喜びを分かち合う仲間はいないのです。その足元の脆さが限りない歓喜に水を差すのは避けられないでしょう。
その不安を打ち消すように、もう一度冒頭の詩とメロディが戻ってきて、「ぼくのものだ!」という言葉の連呼で輝かしく曲は終わります。
( 2013.07.06 藤井宏行 )