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Soleil couchant    
 
夕日  
    

詩: ユゴー (Vicomte Victor Marie Hugo,1802-1885) フランス
    Les Feuilles d'automne - 35. Soleils couchants 6 Le soleil s'est couché ce soir dans les nuées

曲: マスネ (Jules-Emile-Frederic Massenet,1842-1912) フランス   歌詞言語: フランス語


Le soleil s'est couché ce soir dans les nuées;
Demain viendra l'orage et le soir et la nuit;
Puis l'aube,et ses clartés de vapeurs obstruées!
Puis les nuits,puis les jours,pas du temps qui s'enfuit!

Tous ces jours passeront; ils passeront en foule
Sur la face des mers,sur la face des monts,
Sur les fleuves d'argent,sur les forêts,où roule
Comme un hymne confus des morts que nous aimons.

Mais moi,sous chaque jour courbant plus bas ma tête,
Je passe et,refroidi sous ce soleil joyeux,
Je m'en irai bientôt,au milieu de la fête,
Sans que rien manque au monde immense et radieux!

太陽が沈んだ 今宵 雲の中に
明日は嵐が来るだろう 夕方が そして夜が
そしてまた夜明けが 靄に包まれた光が来る!
それから夜また昼が 時は過ぎ去って行く!

こうして日々は過ぎて行く 通り過ぎるのだ 群れをなして
海の上を 山々の上を
銀色の川の上を 森の上を そこで鳴り響く
われらが愛した死者たちのおぼろげな哀歌のように

だが私は、日々 頭を次第に深く垂れて
私は通り過ぎねばならない 喜びに満ちた太陽の下でも凍りつきながら
私はすぐに立ち去るのだ この祝宴の真っ只中から
それでも巨大で輝かしいこの世界から失われるものは何もない!


マスネの亡くなった年 1912年の歌曲です。年老いてこの世を去っていく者の諦観をしみじみと表現したなかなか印象深い歌です。よもや自らの死を予感して書いたというわけではないでしょうけれども。寂しげに、つぶやくように始まる音楽はしかし、最後の節になってなぜか勝ち誇ったような明るい響きとなって曲を閉じます。いかにもマスネらしい甘美なメロディが最後は華やかに鳴り響く。さすが独自の歌曲のスタイルを打ち立てた人だけのことはあるでしょうか。

詩はフランスの文豪ヴィクトル・ユゴーのもの。彼の初期の詩集「秋の木の葉 Les Feuilles d'automne(1829)」より。6つの詩から構成されている「夕日」というタイトルの詩の一番最後、6番目の詩です。原詩では4節からなっていてマスネはその第3節を省略しています。省略した部分は大自然は歳を取ることなく、未来永劫活気に満ち続けていることを語っていますが、これを省略したことで、マスネの意図した最後に明るく盛り上がるところが生きてくるように思えます。

( 2013.04.27 藤井宏行 )


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