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Since she whom I lov'd   Op.35-6  
  The Holy Sonnets of John Donne
私の愛した彼女は  
     ジョン・ダンの宗教的なソネット

詩: ダン (John Donne,1572-1631) イギリス
    Holy Sonnets 17 

曲: ブリテン (Edward Benjamin Britten,1913-1976) イギリス   歌詞言語: 英語


Since she whom I lov'd hath pay'd her last debt
To Nature,and to hers,and my good is dead,
And her Soule early into Heaven ravished,
Wholly on heavenly things my mind is sett.

Here the admyring her my mind did whett
To seeke thee God; so streams do shew their head;
But though I have found thee and thou my thirst hast fed,
A holy thirsty dropsy melts mee yett,

But why should I begg more love,when as thou
Dost wooe my soul for hers: off'ring all thine:
And dost not only feare lest I allow
My love to Saints and Angels,things divine,

But in thy tender jealousy dost doubt
Lest the world,Fleshe,yea,Devill putt thee out.

私の愛した彼女は 自分の最後の負債を返したのだ
自然へと そして自分自身と私の益となるように死んでしまい
彼女の魂はかくも早く天国へと奪い去られてしまった
それですっかり天国のことばかりに私の心は向けられている

この世にあって彼女を敬愛することに私の思いは駆り立てられ
御身を 神を求めるようになったのだ 水の流れがその源を示すように
私は御身を見出し 御身は私の渇きを癒されたが
聖なる渇きの腫れものは私をなおも溶かしてしまう

だが どうして私にはこれ以上の愛を求める必要があるのか 御身が
私の魂を彼女のかわりに口説き 御身のあらゆるものを提供して下さり
そして恐れを抱いていて下さる 私が許してしまわないかと
この愛を 聖人たちや天使や その他神聖なものなどに

その上に御身の穏やかな嫉妬のうちに疑っておられるのだから
この世界や 肉体や そして悪魔が御身を追い出しはしないかと

ダンが1617年に世を去った妻アンへのことを歌った詩なのだそうです。愛する者の死が宗教心を一層研ぎ澄ますというのは分かるような気がしますが、どことなくシニカルな感じを死が漂わせているのはさすがジョン・ダンといったところでしょうか。しかしながら非常に情感に満ちた美しいメロディをブリテンはつけており、音楽と合わせてみるとこの歌曲集の中の白眉ではないかと思います。

( 2013.02.24 藤井宏行 )


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