Oh my blacke Soule Op.35-1 The Holy Sonnets of John Donne |
おお私の黒い魂よ ジョン・ダンの宗教的なソネット |
Oh my blacke Soule! now thou art summoned By sicknesse,death's herald,and champion; Thou art like a pilgrim, which abroad hath done Treason,and durst not turne to whence hee is fled, Or like a thiefe,which till death's doome be read, Wisheth himselfe deliver'd from prison; But dam'd and hal'd to execution, Wisheth that still he might be imprisoned. Yet grace,if thou repent,thou canst not lacke; But who shall give thee that grace to beginne? Oh make thyselfe with holy mourning blacke, And red with blushing,as thou are with sinne; Or wash thee in Christ's blood,which hath this might That being red,it dyes red soules to white. |
おお私の黒い魂よ 今お前は召喚されたのだ 病によって かの死の使いにして戦士たる者に お前は巡礼のようだ 異国の地で 謀反を起こし 振り返ることもできない 逃げ出す時に あるいは盗賊に似ている 死刑の宣告が読み上げられるまでは 牢獄から解放してほしいと願っているが 宣告がなされ 刑場に引き出される時には ずっと獄中にいたいと願う者に だが恩寵は もしお前が悔いているならば 得られぬことはない しかし誰がお前にその恩寵をお授け下さるのだ? おお お前自身を聖なる悲しみの黒で染めよ それから恥で赤く お前の罪で赤く染まっているほどに あるいは自分をキリストの血で洗うのだ その血には力がある 赤いのだが 赤い魂を白く染める力が |
17世紀の詩人ジョン・ダンは思わず赤面してしまうような愛の詩でも有名ですが、20編ほどからなる宗教的なソネットで死への恐れや悲しみ、そしてそれでもなおそこへ立ち向かおうとする意志などを描き出しており、中でも「死よ 驕るなかれ」で始まるソネットは有名です。このソネット集から9篇を選び出してブリテンは歌曲集としております。作曲は1945年、あの忌まわしい第2次世界大戦が終わった年のことでした。多くの歌曲がそうであるように、この歌曲集もピーター・ピアーズのために書かれ、彼によって初演されています。ということで今でももっぱらテノールによって歌われるレパートリーとなっています。
詩は詩人らしい凝った言い回しが意味を取りにくいところも多々ありましたが、なかなか興味深い表現が随所に見られて、訳していてもとても興味深いものでした。
第1曲目はダンの詩集の4番目の詩。いよいよ死を迎えた人間の不安と恐れを見事に描き出しています。ピアノの伴奏が死を告げる鐘のように厳粛な響きを醸し出しています。
( 2013.01.20 藤井宏行 )