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Les deux grenadiers   WWV 60  
 
ニ人の擲弾兵  
    

詩: ルーヴ=ヴェイマル (François-Adolphe Loeve-Veimar,1801-1854) フランス
      Die Grenadiere 原詩: Heinrich Heine ハイネ,Buch der Lieder - Junge Leiden - Romanzen(歌の本-若き悩み-ロマンス)

曲: ヴァーグナー (Richard Wagner,1813-1883) ドイツ   歌詞言語: フランス語


Longtemps captifs chez le Russe lointain,
Deux grenadiers retournaient vers la France;
Déjà leurs pieds touchent le sol germain;
Mais on leur dit: Pour vous plus d'espérance;

L'Europe a triomphé,vos braves ont vécu!
C'en est fait de la France,et de la grande armée!
Et rendant son épée,
l'Empereur est captif et vaincu!

Ils ont frémi; chacun d'eux sent tomber
des pleurs brülants sur sa mâle figure.
“Je suis bien mal” ... dit l'un,”je vois couler
des flots de sang de ma vieille blessure!”

“Tout est fini,” dit l'autre,”ô,je voudrais mourir!
Mais au pays mes fils m'attendent,et leur mère,
qui mourrait de misère!
J'entends leur voix plaintive; il faut vivre et souffrir!”

“Femmes,enfants,que m'importe!
Mon coeur par un seul voeu tient encore à la terre.
Ils mendieront s'ils ont faim,
l'Empereur,il est captif,mon Empereur! ...

Ô frère,écoute-moi,... je meurs! Aux rives que j'aimais,
rends du moins mon cadavre,et du fer de ta lance,
au soldat de la France
creuse un funèbre lit sous le soleil français!

Fixe à mon sein glacé par le trépas
la croix d'honneur que mon sang a gagnée;
dans le cerceuil couche-moi l'arme au bras,
mets sous ma main la garde d'une épée;

de là je prêterai l'oreille au moindre bruit,
jusqu'au jour,où,tonnant sur la terre ébranlée,
l'écho de la mêlée
m'appellera du fond de l'éternelle nuit!

Peut-être bien qu'en ce choc meurtrier,
sous la mitraille et les feux de la bombe,
mn Empereur poussera son coursier
vers le gazon qui couvrira ma tombe.

Alors je sortirai du cerceuil,tout armé;
et sous les plis sacrés du drapeau tricolore,
j'irai défendre encore
la France et l'Empereur,l'Empereur bien aimé.”

ずっと長いこと捕らえられていた 遠くロシアに
ふたりの擲弾兵が帰り行く フランス目指して
すでに彼らの足はドイツに辿りつこうとしていた
だがそこで告げられたのだ もはや希望はないことを

ヨーロッパが勝利したのだ その勇気が生きのびた!
フランスは敗れたのだ その偉大な軍隊は!
そしてその刃によって
皇帝陛下は敗れ そして捕らえられたのだ!

彼らは打ち震え、そして流したのだ
熱い涙を その男らしい顔の上に
「俺は重い病だ」ひとりが言う「流れ出すのが見えるぞ
血の川が俺の古傷から」

「全ては終わった」もうひとりが言う「おお死んでしまえたら!」
だが家には息子たちが待ってる それにその母親も
飢えて死んじまうかも知れない!
俺には嘆きの声が聞こえる 生きて苦しみ続けねばならぬのだ!」

「女房が ガキどもが 何だっていうんだ!
俺の心はただ 祖国に再び戻ることだけを願っている
家族は飢えれば 乞食をさせればいいさ
皇帝陛下が捕らわれたのだぞ われらが皇帝が

おお兄弟よ 聞いてくれ…俺は死んでゆく!愛する岸辺に
俺を埋めてくれ 鉄の槍と一緒に
フランスの兵士として
死の床を掘ってくれ フランスの太陽の下!

死に凍りついた俺の胸の上に置かれるのは
俺の血が勝ち取った名誉の十字架だ
棺の中には一緒に武器を入れてくれ
俺の手には剣を握らせておいてくれ

そこから俺は耳を澄まして聞いているぜ
大地に雷鳴がとどろくその日まで
戦いのこだまが
俺を永遠の夜の深みから目覚めさせるその時!

おそらくその時には激しい戦いの中
砲火や銃弾が飛び交っているだろう
皇帝陛下は馬を駆り
俺の墓の上の芝を駆け抜けて行くだろう

その時俺は棺より起き上るのだ 驚いて
そして聖なる三色の旗の下
俺はお護りするだろう
フランスと皇帝陛下を 愛する皇帝陛下を


これもワーグナーのパリ時代の作品でしょう。ハイネの原詩ですがフランス語の歌詞に曲が付けられています。テーマがナポレオンに忠誠を捧げるふたりの兵士ですから、フランス語というのも適してはいるでしょうか。シューマンがメロディをつけたものが有名ですし、だいぶ昔にこのサイトでも取り上げておりますので、ハイネの原詩と見比べてみて頂けると面白いと思います。こちらはできる限り歌詞のフランス語に忠実に訳してみました。それでこのワーグナーのつけたメロディですが、さすがオペラの大作家に将来なる人の手になるものといったところでしょうか。たいへんドラマティックに仕上がっております。そして非常に興味深いのが、シューマンが自分の曲でやったのと同じように、後半のナポレオンが再び立ち上がるところにフランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」を織り込んでいるところです。こちらは一層巧みにピアノ伴奏に織りこんであって、最後の盛り上がりなどは気持ち良いほど。まあシューマンの二番煎じ感はどうしても避けられませんので、ほとんど取り上げられることがないのも仕方のないところではありますが。
テノールのニコライ・ゲッダが歌っているもの(Bluebell)などいくつか録音はあるようです。

( 2013.01.06 藤井宏行 )


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