O Mensch! Gib acht Symphony no. 3 |
おお人間よ! 心せよ 交響曲第3番 |
O Mensch! O Mensch! Gib acht! Gib acht! Was spricht,die tiefe Mitternacht? Ich schlief,ich schlief Aus tiefem Traum bin ich erwacht! Die Welt ist tief! und tiefer,als der Tag gedacht! O Mensch! O Mensch! Tief ! Tief ! Tief ist ihr Weh!,Tief ist ihr Weh!, Lust Lust tiefer noch als Herzeleid! Weh spricht: Vergeh! Weh spricht: Vergeh! Doch alle Lust will Ewigkeit -, will tiefe,tiefe Ewigkeit!” |
おお人間よ! おお人間よ! 心せよ! 心せよ! 何を語っているのか 深い真夜中は? われは眠っていた われは眠っていた 深き夢より われは目覚める 世界は深い はるかに深いのだ 昼間が考えていたよりもずっと おお人間よ! おお人間よ! 深い 深い 深いのはその苦悩 深いのはその苦悩 だが快楽は -心の苦悩よりなお深いのだ 苦悩は語る:消え去れ!と だがあらゆる快楽は永遠を求める 深い 深い永遠を求めるのだ! |
ニーチェの大作「ツァラトゥストラはこう語った」の第4部大詰めにある「酔いしれた者の歌 Das trunkne Lied」で、真夜中12時の鐘がツァラトゥストラに歌いかける歌です。ここで彼はこの歌の解説を延々としてくれています。あまりに文学的な表現での解説なのでうまくまとめる力は私にはないのですが、夜に目覚めた鐘が苦しいことも楽しいこともみな甦らせる、そして人間は苦しみに対しては「消え去ってくれ」と叫ぶけれども、喜びに対してはそれが永遠に続くことを求める、永遠を求める力を持っているだけそれは「深い」のだと。そして永遠を求める者の支えこそが、「世界は永遠に同じことを繰り返す(永劫回帰)」という思想なのだと。
重たく沈んだ感じの音楽ですが、実はこれは歓喜に満ちた歌なのでしょう。
なお、ニーチェはこの歌を第3部の終わり「もうひとつのダンスの歌 Das andere Tanzlied」でも取り上げており、そこでは12回打たれる鐘の合間に詩の一行一行が語られています。何か百八つの煩悩を払う除夜の鐘といった趣きですね。
( 2012.09.01 藤井宏行 )