TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


笛の音のする里へ行かうよ    
 
 
    

詩: 萩原朔太郎 (Hagiwara Sakutarou,1886-1942) 日本
    青猫  

曲: 石渡日出夫 (Ishiwata Hideo,1912-2001) 日本   歌詞言語: 日本語


俥に乗つてはしつて行くとき
野原も 山も ばうばうとして霞んでみえる
柳は風にふきながされ
燕も 歌も ひよ鳥も かすみの中に消えさる

ああ 俥のはしる轍を透して
ふしぎな ふしぎな ばうばくたる景色を行手にみる
その風光は遠くひらいて
さびしく憂鬱な笛の音を吹き鳴らす
ひとのしのびて耐へがたい情緒である

このへんてこなる方角をさして行け 行け 行け

俥に乗つてはしつて行くとき
野原も 山も ばうばうとして霞んでみえる
柳は風にふきながされ
燕も 歌も ひよ鳥も かすみの中に消えさる

春の朧な 柳のかげで 歌も燕もふきながされ
わたしの俥やさんはいつしんですよ



萩原朔太郎の独特の味わいのある詩を歌曲にしたものでは、数はそれほど多くはありませんが、この石渡日出夫の作品が印象的です。
この曲も春の美しい情景の中で詩人の感じている屈折した思いを、華やかな伴奏に導かれた前半の明るい快活な情景描写から、しっとりと物思いにふける中間部にさっと曲想を展開するところの見事さ。そしてまた冒頭の華やかなメロディの再現。そしてコーダ部分の畳みかけるような盛り上がり。リサイタルで歌うととても効果のあがる作品ではないかと思います。

( 2012.04.21 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ