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Der Wanderer   Op.4-1 D 489  
 
さすらい人  
    

詩: リューベック (Georg Philipp Schmidt von Lübeck,1766-1849) ドイツ
      

曲: シューベルト (Franz Peter Schubert,1797-1828) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Ich komme vom Gebirge her,
Es dampft das Tal,es braust das Meer,
Ich wandle still,bin wenig froh,
Und immer fragt der Seufzer,wo?

Die Sonne dünkt mich hier so kalt,
Die Blüte welk,das Leben alt,
Und was sie reden,leerer Schall,
Ich bin ein Fremdling überall.

Wo bist du,mein geliebtes Land,
Gesucht,geahnt,und nie gekannt?
Das Land,das Land so hoffnungsgrün,
Das Land,wo meine Rosen blühn;

Wo meine Freunde wandelnd gehn,
Wo meine Toten auferstehn,
Das Land,das meine Sprache spricht,
O Land,wo bist du? .

Ich wandle still,bin wenig froh,
Und immer fragt der Seufzer,wo?
Im Geisterhauch tönt's mir zurück,
“Dort,wo du nicht bist,dort ist” das Glück.”


わたしは連なる山々を越えてここへ来た
谷は霧に沈み、荒海は轟く
無言で歩くわたしは喜びも無く
ため息とともにたえず問う、「どこだ?」

ここで太陽はわたしにはとても冷たく思え
花々は萎れ、あらゆる命は老い
人々の話す言葉は空虚に響く
わたしはどこにいてもよそ者なのだ

どこにあるのだ、わたしの愛する国は?
求め、予感しながら行くことが出来ない国!
その国、希望の森のその国
わたしの薔薇が咲くその国

わたしの友たちが歩き回り
亡くなった親しい人々は蘇り
わたしの言葉が話されるその国
おお、おまえはどこにあるのだ?・・・

無言で歩くわたしは喜びも無く
ため息とともにたえず問う、「どこだ?」
精霊の風の中から返事が響いた
「おまえのいない場所だ、幸せはそこにある!」

シューベルトの好んだ孤独でペシミスティックな「さすらい人」の詩による歌曲。ピアノ曲「さすらい人幻想曲」にその主題が使われていることで知られています。フィッシャー=ディースカウの歌曲全集盤(グラモフォン)における喜多尾道冬氏の解説によれば、原詩のタイトルは「よそ者の夕べの歌」”Des Fremdlings Abendlied”であり、シューベルトは当初「不幸な男」というタイトルをつけ、後に「さすらい人」と改めたとのことです。また詩文にも多くの改変を施しているようです。F=D氏はそのグラモフォン盤とその前のEMI盤で第4連1行目の「友」を「夢」にして歌っていますが、これが原詩通りなのだそうです。そこだけ原詩に直した意図は不明で、3回目のフィリップス盤では「友」で歌っています。シューベルトはその後シュレーゲルの同名の詩による歌曲も作曲しています。

最終節の精霊の声の最後の音は異常に低く書かれていますが、大抵はオクターブ上げて歌われるようです。ナタリー・シュトゥッツマンが最初に来日した時にこの曲を歌ったのですが、この部分を原曲通りにしかも余裕で響かせたのには驚きました。しかしやはりちょっとグロテスクな感じもしました。作曲者の狙いはそこにあるのかもしれませんが。これもフィッシャー=ディースカウ&ブレンデルの盤で聴いています。

( 2003.10.26 甲斐貴也 )


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