人生遠視 智恵子抄 |
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足もとから鳥がたつ 自分の妻が狂気する 自分の着物がぼろになる 照尺距離三千メートル ああこの鉄砲は長すぎる |
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詩集では26番目 昭和10年の1月とあります。饒舌な長い詩の多い智恵子抄においてこの詩の凝縮された短さは異例であり、逆にその短さが例えようのない緊迫感をあたえてくれています。
ここまではかすかな不安感でしかなかった妻の狂気が、ここからは彼の人生の重荷として表に躍り出てくるのです。
語りと、それに雄弁に掛け合うピアノとのコントラストがインパクト満点で、短い曲ですが非常に印象に残ります。
( 2012.03.17 藤井宏行 )