Im Abendrot D 799 |
夕映えの中で |
O wie schön ist deine Welt Vater,wenn sie golden strahlet! Wenn dein Glanz herniederfällt, Und den Staub mit Schimmer malet, Wenn das Rot,das in der Wolke blinkt, In mein stilles Fenster sinkt! Könnt ich klagen,könnt ich zagen? Irre sein an dir und mir? Nein,ich will im Busen tragen Deinen Himmel schon allhier. Und dies Herz,eh es zusammenbricht, Trinkt noch Glut und schürft noch Licht. |
おお、なんと美しいのだ、御身の世界は、 父よ、世界が金の光を放つ時! また、御身の輝きが降り注ぎ、 ほこりを微光で色づける時、 雲の中でちらついている紅が 私の静かな窓辺に沈み込んでくる時! 私は嘆き、ためらっているのだろうか? 御身も自分も信じられないのだろうか? いや、私は胸にしかと抱こう、 もうここにある御身の天空を。 そして、この心は、もろく崩れ落ちる前に さらに赤熱を飲み込み、光をすすり入れるのだ |
ラッペという教員の詩に1824年か1825年に作曲された荘厳な作品です。
夕焼けの赤さが思い浮かぶ美しい曲ですが、詩人は何か心にわだかまりを抱いてい
るのでしょうか。嘆き、ためらい、不信といった感情が詩人の心を崩壊させようとし
ているのでしょうか。
心に負担をかかえている時は、いつにも増して自然の美しさが身にしみます。詩人
は夕映えの光を飲み込むことによって、癒されたいと望んでいるのでしょう。
自然の懐の深さを示すかのようにピアノ・パートは大きな音程が連なり、手の小さ
なピアニスト泣かせの曲になっています(M.プライスと組んだサヴァリッシュはア
ルペッジョだらけにして弾いていますが、こればかりはどうしようもないですね)。
演奏はアメリング&ボールドウィンが断然素晴らしいです(PHILIPS:1973年)。
全盛期のアメリングがどこまでも伸びる美声で、大自然にじかに語りかけているかの
ような広がりのある名唱を聴かせてくれます。ボールドウィンは決して前面に出ない
のに、やるべき事はしっかりやって、歌との一体化を完璧に実現しています。
( 2002.01.06 フランツ・ペーター )