Winterlied |
冬の歌 |
Über Berg und Tal Mit lautem Schall Tönet ein Liedchen. Durch Schnee und Eis Dringt es so heiß Bis zu dem Hüttchen. Wo das Feuer brummt, Wo das Rädchen summt Im traulichen Stübchen. Um den Tisch herum Sitzen sie stumm. Hörst du mich,Liebchen? Im kalten Schnee, Sieh! wie ich steh', Sing' zu Dir,Mädchen! Hat denn mein Lied So dich erglüht Oder das Rädchen? O liebliche Zeit Wie bist du so weit! O selige Stunden! Ach nur ein Blick War unser Glück. Ewig verschwunden! |
山や谷を越えて 大きな音をたて ひとつの歌が響く 雪や氷を貫いて 歌はとても熱く届く あの小屋のところへと そこでは炎が燃えて そこでは糸車が回っている 心地よい部屋の片隅で テーブルのまわりでは みな黙って座っている きみは聞こえるかい いとしい人よ? 冷たい雪の中に ご覧よ!ぼくは立って きみに歌を歌ってるんだ 少女よ! この歌のせいなの きみの頬が赤いのは それとも糸車のせい? おお幸せな時は なんて遠くに行ってしまったことか! おお 至福の瞬間よ! ああ ほんの一瞬だけだった ぼくらの幸せは 永遠に去っていったのだ! |
マーラー最初期の歌曲3曲のうちのひとつ、後の濃厚な歌曲とは似ても似つかない清々しい音楽です。悲しい恋の恨みごとの歌ですが、淡々と響く子守歌のようなメロディでひそやかに歌われます(外で恋人に向けて歌う歌ですので、一種のセレナーデのようなものかと思いますが、真冬なので夜に歌うのは寒過ぎて難しいでしょうか。昼間に歌っているように思えます)。中間部でメロディがほのかに暗くなりますが、最後は詞は嘆いているものの音楽は冒頭の淡々としたメロディが戻ってきて静かに終わります。
録音は極めて少ないですが、オリジナルのピアノ伴奏によるものと、現代作曲家ルチアーノ・ベリオが管弦楽伴奏に編曲したもの、その両方を歌っているバリトンのトマス・ハンプソンの歌がなかなか良いです。
( 2012.01.20 藤井宏行 )