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Im Frühling   Op.101-1 D 882  
 
春に  
    

詩: シュルツェ (Ernst Konrad Friedrich Schulze,1789-1817) ドイツ
      Am 31sten März 1815

曲: シューベルト (Franz Peter Schubert,1797-1828) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Still sitz’ ich an des Hügels Hang,
Der Himmel ist so klar,
Das Lüftchen spielt im grünen Tal.
Wo ich beim ersten Frühlingsstrahl
Einst,ach so glücklich war.

Wo ich an ihrer Seite ging
So traulich und so nah,
Und tief im dunklen Felsenquell
Den schönen Himmel blau und hell
Und sie im Himmel sah.

Sieh,wie der bunte Frühling schon
Aus Knosp’ und Blüte blickt!
Nicht alle Blüten sind mir gleich,
Am liebsten pflückt ich von dem Zweig,
Von welchem sie gepflückt!

Denn alles ist wie damals noch,
Die Blumen,das Gefild;
Die Sonne scheint nicht minder hell,
Nicht minder freundlich schwimmt im Quell
Das blaue Himmelsbild.

Es wandeln nur sich Will und Wahn,
Es wechseln Lust und Streit,
Vorüber flieht der Liebe Glück,
Und nur die Liebe bleibt zurück,
Die Lieb und ach,das Leid.

O wär ich doch ein Vöglein nur
Dort an dem Wiesenhang
Dann blieb ich auf den Zweigen hier,
Und säng ein süßes Lied von ihr,
Den ganzen Sommer lang.

丘の斜面に静かに私は腰をおろす
空はとても良く晴れて
風は緑の谷間をそよ吹く
そこでは、私は早春の日差しの下
その昔、ああ とても幸せだった

そこを私はあの人に寄り添って歩いた
とても心地よく、とても親密に
暗い岩場の泉の底には
美しい空が青くまた明るく
その空の中にはあの人が見えた

見るがいい、色とりどりの春が、もう
つぼみや花の中から現れている
私にはどの花も同じではなく
私が摘みたいのはあの枝の花
あの人がかつて摘んだ枝の花だ

すべてはあの時のままだ
花も、緑の野原も
太陽が明るく照らさなくなったわけではないし
泉に映る影が友好的でなくなったわけではない
この青い空の影が

人の心だけがうつろい
喜びは仲たがいに代わってしまった
愛の喜びは遠く消え去り
愛した想いだけが残った
愛と、そして悲しみだけが

おお、私が一羽の鳥であったなら
あそこの丘の斜面にいる鳥で
そうしたら私はいつまでもこの枝の上に止まって
あの人の甘い歌を歌い続けるのに
夏の終わりまでずっと...


春なのに、無くした恋の歌です。でも暗く沈むのは最後の節の「人の心だけが」の部分の前半だけで、あとは淡々とあの人と一緒だった頃の懐かしくも楽しい思い出を、美しい自然の中でしみじみと思い出すという、実に味わいのある曲だと思います。
ゆったりとしたリズムが刻まれる中、訥々と思い出を語る歌が印象的です。まだ多感だった高校生の頃から、この世界にはもの凄く惹かれるものがあって、シューベルトの作品の中でも好きな曲のひとつでした。
こんな雰囲気の歌ですから、人生を達観したようなベテラン歌手の声で聴くのが最高で、私が愛聴するのはハンス・ホッターのバスです。このほんわりと包み込む暖かみ、まさに春の歌の王道ですね。

( 2001.03.26 藤井宏行 )


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