Neige,neige Symphony no. 8 Part.2 |
おすがりします おすがりします 交響曲第8番第2部 |
UNA POENITENTIUM (sonst Gretchen genannt,sich anschmiegend) Neige,neige, Du Ohnegleiche, Du Strahlenreiche, Dein Antlitz gnadig meinem Glück! Der früh Geliebte, Nicht mehr Getrübte, Er kommt zurück. Er kommt zurück. Er kommt zurück. SELIGE KNABEN (in Kreisbewegung sich nähernd) Er überwächst uns schon An mächt'gen Gliedern, Wird treuer Pflege Lohn Reichlich erwidern. Wir wurden früh entfernt Von Lebechören; Doch dieser hat gelernt, Er,er,er wird uns lehren. Er,wird uns lehren Er überwächst uns schon An mächt'gen Gliedern, Wird treuer Pflege Lohn Reichlich erwidern. Wir wurden früh entfernt Von Lebechören; Doch dieser hat gelernt, dieser hat gelernt, er wird uns lehren. UNA POENITENTIUM Vom edlen Geisterchor umgeben, Wird sich der Neue kaum gewahr, Er ahnet kaum das frische Leben, So gleicht er schon der heil'gen Schar Sieh,wie er jedem Erdenbande Der alten Hülle sich entrafft, Und aus ätherischem Gewande, Hervortritt erste Jugendkraft! Vergönne mir,ihn zu belehren, Noch blendet,blendet ihn der neue Tag! MATER GLORIOSA Komm! Komm! Hebe dich zu höhern Sphären! Wenn er dich ahnet,folgt er nach. (Chor) Komm! Komm! DOCTOR MARIANUS UND CHOR (auf dem Angesicht anbetend) Blicket auf, Komm! Blicket auf, Komm! Alle reuig Zarten Komm! Blicket auf, Komm! Auf zum Retterblick, Alle reuig Zarten, Euch zu sel'gem Glück Dankend umzuarten! Werde jeder bess're Sinn Dir zum Dienst erbötig; Jungfrau,Mutter,Königin, Göttin,bleibe gnädig! bleibe gnädig! bleibe gnädig! (Chor) Blicket auf! Blicket auf! Alle reuig Zarten Blicket auf! Blicket auf! Werde jeder bess're Sinn Dir zum Dienst erbötig; Blicket auf! Blicket auf! Dir zum Dienst erbötig; Jungfrau,Mutter,Königin, Göttin,bleibe gnädig! bleibe gnädig! CHORUS MYSTICUS: Alles Vergängliche Ist nur ein Gleichnis; Das Unzulängliche, Hier wird's Ereignis; Das Unbeschreibliche, Hier ist's getan; (mit Sop Solo) Das Ewig-Weibliche Zieht uns hinan. Zieht uns hinan. Zieht uns hinan. Zieht uns hinan. Zieht uns hinan. (Chor) Ewig! Ewig! Ewig! Ewig! (solo mit Chor) Ewig! Zieht uns hinan. Alles Vergängliche Ist nur ein Gleichnis; Das Ewig-Weibliche Zieht uns hinan. hinan. Hinan! |
一人の贖罪の女 (かつてグレートヒェンと呼ばれた者、すがりつつ) おすがりします おすがりします 類いなきあなた様 限りない光に包まれるあなた様 どうぞ慈悲深いお顔をお向けください 私の幸せに! むかしお慕い申した方が 今はもう穢れなく あの方が帰っておいでになったのです あの方が帰っておいでになったのです あの方が帰っておいでになったのです 祝福された少年たち (輪を描いて近づいて来る) このお方はわたしたちよりも大きくなって 手足も逞しくなりました。 わたしたちの心づくしに、 忠実に報いてくださるでしょう。 わたしたちは人の世の集まりから 早く離れてしまいましたが、 このお方はそこで多くを学んで来られたのです。 この方は わたしたちにもきっと教えてくださるでしょう。 この方は わたしたちにもきっと教えてくださるでしょう。 このお方はわたしたちよりも大きくなって 手足も逞しくなりました。 わたしたちの心づくしに、 忠実に報いてくださるでしょう。 わたしたちは人の世の集まりから 早く離れてしまいましたが、 このお方はそこで多くを学んで来られたのです。 このお方はそこで多くを学んで来られたのです この方は わたしたちにもきっと教えてくださるでしょう。 一人の贖罪の女 気高い聖霊の合唱に囲まれて、 新参のあの方はご自分がどうなったかわからないのでしょう まだお気づきではありません 新しい生命に。 それでももう聖なる方々に似てまいりました。 ご覧ください、あの方はあらゆる地上の束縛を 古い殻を打ち破りました そして、纏った霊気の衣の中からは 真新しい青春の力が現れております。 お許しください あの方を教え導くことを。 まだ眩しがらせて、眩しがらせているのです あの方を新しい光は! 栄光の聖母 行きなさい! 行きなさい! 昇るのです お前はもっと高い天へと お前に気付いたなら、彼もついて行くでしょう。 (合唱) 行きなさい! 行きなさい! マリア崇拝の博士と合唱 (深くうつむき伏して、礼拝しながら) 見上げよ 行きなさい! 見上げよ 行きなさい! すべての悔いにみちた優しき者たちよ 行きなさい! 見上げよ 行きなさい! 救い主の眼差しを すべての悔いにみちた優しき者たちよ 汝ら 聖なる幸運を受けて 感謝に満ちて身を新たにするため! すべてのよき心を持てる者は 御身に進んでお仕え致しましょう 乙女よ、御母よ、女王よ 女神よ、恵み深くあらんことを! 恵み深くあらんことを! 恵み深くあらんことを! 合唱 見上げよ! 見上げよ! すべての悔いにみちた優しき者たちよ 見上げよ! 見上げよ! すべてのよき心を持てる者は 御身に進んでお仕え致しましょう 見上げよ! 見上げよ! 御身に進んでお仕え致しましょう 乙女よ、御母よ、女王よ 女神よ、恵み深くあらんことを! 恵み深くあらんことを! 神秘の合唱 すべて移ろいゆくものは ただ物のたとえのようなもの 足らざるものも ここでは実現するのだ 描写しえないことが ここに成し遂げられる (ソプラノソロと) 永遠の女性的なるものが われらを高みへと引き上げる われらを高みへと引き上げる われらを高みへと引き上げる われらを高みへと引き上げる われらを高みへと引き上げる 合唱 永遠に!永遠に! 永遠に!永遠に! ソロと合唱 永遠に! われらを高みへと引き上げる すべて移ろいゆくものは ただ物のたとえのようなもの 永遠の女性的なるものが われらを高みへと引き上げる 高みへ 高みへと! |
この後はほとんど切れ目なく歌が続きますので、この贖罪の女(かつてグレートヒェンと呼ばれた者 ソプラノ)の歌の前でページを切るかどうかは迷ったのですが、他にページをうまく切り替えられるタイミングがなかったのでここでページを変えました。このあと聖母の歌が登場する前も少し間奏が入りますので、そこで切る手もあったのですが、意味の繋がり的にはそこでは切らずに一気に最後まで持っていく方がしっくりしましたのでこのように致しました。
贖罪の女はファウストが戻ってきたことを喜びに満ちて聖母様に告げます。マーラーはEr kommt zurück(彼が戻ってきたのです)を何回も繰り返させることでその心の昂ぶりをうまく表現しております。
軽やかな導入(聖母登場の際に現れた神々しい弦のメロディが使われていることにお気づきでしょう。それがうきうきと楽しげなものに変えられているのがとても興味深いのです)がこのEr kommt zurückで一瞬しっとりと落ち着くところが実に深いです。このあとマンドリンの伴奏まで入って賑やかな少年たちの合唱、聖なる魂として救済されようとしているファウストのまわりでワイワイやっているのでしょう。
再び入ってくる贖罪の女のソロは、面白いほどにこの交響曲第1部の素材を引用しています。Er ahnet kaum das frische Leben(新参のあの方はご自分がどうなったかわからないのでしょう)は第1部導入部のソロ歌手たちによって歌われるimple superna gratia(満たし給え 天の恩寵で)の旋律そのままですし、wie er jedem Erdenbande(あらゆる地上の束縛を)のあとあたりにはVeni creator spiritus(来たれ 創造主たる精霊よ)のこだまが聞こえます。その後感きわまってNoch blendet,blendet ihn der neue Tag!(まだ眩しがらせて、眩しがらせているのです あの方を新しい光は!)の部分は第1部、展開部に入る直前のpectora.Superna,superna superna gratia!(われらの胸に 天界の 天界の 天界の恩寵を!)の盛り上がりの旋律そのままです。
言わずもがなのことながら、これらの歌詞の内容同士の繋がりを意識しての引用ですね。
この贖罪の女の懇願を受けて、天に浮かぶ聖母(ソプラノ)がゆったりと導きの歌を歌います。グレートヒェンの昇天とともにファウストもまた昇天できるでしょうというお言葉でしょう。聖母の主題はフルートの伴奏と共に美しく彩られています。
再びマリア崇拝の博士(テノール)が入ってきて、この音楽の大団円に向けての導きを果たします。聖母様に導かれて昇天していくふたりを見送っていくところでしょうか。
美しい間奏のあと、合唱が静かに最後の「神秘の合唱」を歌い始めます。「永遠の女性的なるものが」のところから3人のソプラノソロと絡み合いながら次第に盛り上がっていき、再び神秘の合唱を始めるところでは激しいクライマックスを作って、第1部の「来たれ 創造主たる精霊よ」の旋律を絡めつつ荘厳な終結を見せます。
この合唱、同じ詩がリストの「ファウスト交響曲」にも使われています。まさに聖母様とそしてかつてグレートヒェンと呼ばれた贖罪の女、女性たちの力でファウストも昇天していく、合唱の力強い響きの上で“Zieht uns hinan(われらを高みへと引き上げる)”と歌うソプラノたちの歌声はそれを示しているようです。
( 2011.12.30 藤井宏行 )