Auf dem Wasser zu singen Op.72 D 774 |
水の上で歌う |
Mitten im Schimmer der spiegelnden Wellen Gleitet,wie Schwäne,der wankende Kahn: Ach,auf der Freude sanftschimmernden Wellen Gleitet die Seele dahin wie der Kahn; Denn von dem Himmel herab auf die Wellen Tanzet das Abendrot rund um den Kahn. Über den Wipfeln des westlichen Haines Winket uns freundlich der rötliche Schein; Unter den Zweigen des östlichen Haines Säuselt der Kalmus im rötlichen Schein; Freude des Himmels und Ruhe des Haines Atmet die Seel im errötenden Schein. Ach,es entschwindet mit tauigem Flügel Mir auf den wiegenden Wellen die Zeit; Morgen entschwinde mit schimmerndem Flügel Wieder wie gestern und heute die Zeit, Bis ich auf höherem strahlendem Flügel Selber entschwinde der wechselnden Zeit. |
波の上できらめく光につつまれて、 ゆれながら小船はスワンのように滑っていく。 穏やかに光る波の喜びにのって、 私の心も小船と同じように滑っていく。 大空から夕陽がさして、 船のまわりの波の上で踊っているものだから。 西側の木立の頂きの上から、 夕陽の光が私たちにやさしく手招きし、 東側の木立の枝の下では、 夕陽の光の中で菖蒲が静かにそよぐ。 夕陽に包まれた、大空の喜びと木立の中の安らぎで、 私の心は満たされる。 ああ、露にぬれて光る翼のような、 ゆれる波の上で私は時が経つのを忘れる。 昨日も、今日も、そして明日もこの翼の上で、 時は失われていくだろう。 ついには、もっと光る翼に乗って高みにまい上がり、 私も過ぎ行く時の上から消え去るのだ。 |
ご存知の曲です。ヴォーカル・オブリガード付きの「舟歌(バルカローレ)」と いう評もあることだし。かすかにゆれる小船の中に横たわって、この幸せの中でこのまま自分が消え去ってしまいたい(死んでしまいたい)。シューベルトの音楽の特徴の一つである幸せの中の悲しみ、死への憧れがよく表れた歌曲でしょう。そして、長調から短調へ、短調から長調への移ろいがそれを強調する。ショパンの「舟歌」と同様の雰囲気の曲と考えることも出来るでしょう。
結構歌いにくい曲ではないかと思います。大歌手でも苦しそうな歌いぶりの人がいます。驚いたのは、C.ルードヴィッヒで他の人よりうんとテンポがのろい(通常3:20〜3:40分ぐらいが4:30分もかけて歌っている)。
男声ではフィッシャーディースカウ(ピアノはムーア、録音は2種ある)を選びます。とてもうまい。女声ではイムガルト=ゼーフリート(ピアノはエリック=ウェルバ)、シュワルツコップ(ピアノはエドウィン=フィッシャー)、この二人の昔の大歌手が速いテンポで変な雰囲気をつけないでストレートに素直に歌っている。
( 1998.08.03 稲傘武雄 )