Corbeille de fruits |
果実集め |
Écoute,mon coeur ; dans cette flûte chante la musique du parfum des fleurs sauvages, des feuilles étincelantes et de l'eau qui brille; La musique d'ombres sonores,d'un bruit d'ailes et d'abeilles. La flûte a ravi son sourire des lèvres de mon ami et le répand sur ma vie. (H. du Pasquier仏訳) |
聴け わが心よ あの笛の歌声の中に音楽がある 野の花の香りの ざわめく木の葉の そしてきらめく水の 木陰の音楽は 共鳴だ 羽音や蜂たちの 笛はほほ笑みを盗み取るのだ 私の愛する人の唇から そしてそれを私の人生の上に広げてくれる |
「果実集め」とは何も関係がなさそうな詩ですが、それもそのはずでこの詩が含まれるタゴールの詩集のタイトルが「果実集め(Fruit-Gathering)」なのです。この1916年の詩集、詩集がヨーロッパに伝えられたタイミングもあるのでしょうが、同じような内容の詩集「園丁」からはたくさんの詩がヨーロッパの歌曲になっているのに比べほとんどヨーロッパの作曲家に取り上げられておりません。このカプレの曲はその点で非常に珍しいでしょうか。
歌詞にあるように笛の響きをテーマにしておりますので、伴奏もフルートだけ、いかにもカプレらしい幻想的な世界が広がっています。雄弁な響きのフルートが東洋とも西洋ともつかない不思議な幽玄の世界を描き出し、澄んだ声のソプラノと絡み合うと得も言われない味わいです。1924年の作品、カプレ晩年(といいつつもまだ40代半ばなのですが)の力作と言えましょうか。
( 2011.12.02 藤井宏行 )