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Heidenroslein   Op.3-3 D 257  
 
野ばら  
    

詩: ゲーテ (Johann Wolfgang von Goethe,1749-1832) ドイツ
      Heidenroslein (1771)

曲: シューベルト (Franz Peter Schubert,1797-1828) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Sah ein Knab’ ein Röslein stehn,
Röslein auf der Heiden,
War so jung und morgenschön,
Lief er schnell es nah zu sehn,
Sah’s mit vielen Freuden.

Röslein,Röslein,Röslein rot,
Röslein auf der Heiden.


Knabe sprach: ich breche dich,
Röslein auf der Heiden!
Röslein sprach: ich steche dich,
Daß du ewig denkst an mich,
Und ich will’s nicht leiden.

Röslein,Röslein,Röslein rot,
Röslein auf der Heiden.


Und der wilde Knabe brach
’s Röslein auf der Heiden;
Röslein wehrte sich und stach,
Half ihr doch kein Weh und Ach,
Mußt es eben leiden.

Röslein,Röslein,Röslein rot,
Röslein auf der Heiden.

若い男が見かけた、一本のバラが咲いているのを
荒れ野に咲く野バラを
とても若くてキレイだったもんだから
もっと近くで見ようと駆け寄って
そいつは嬉しさ一杯にバラを眺めまわした

バラよ バラよ 赤いバラ
荒れ野の上に咲いたバラ


ヤツは言った 「お前を摘みとってやるぜ
荒れ野に咲く野バラよ!」
バラは答えた 「摘むならトゲで刺すわ
あんたが永遠に責任とってくれるように
そしてあたしがそれで苦しむことのないように」

バラよ バラよ 赤いバラ
荒れ野の上に咲いたバラ


それでも野蛮な男は摘み取ってしまった。
荒れ野に咲く野バラを
野バラは精一杯抵抗して刺したけれど
嘆きも叫びも役に立たず
されるがままにしかならなかった。

バラよ バラよ 赤いバラ
荒れ野の上に咲いたバラ


これくらいあからさまに訳すとゲーテ独特の皮肉がはっきり出て、この歌が何について歌っているかわかるのではないでしょうか? 実際のところ彼は若い頃傷付けたひとりの娘のことを思い出し(肉体的にどうだったかは分かりませんが)、この詩を苦い後悔の念と共に書いたのだ、という話をどこかで読んだことがあります。
しかしこんな詩にシューベルトはなんと可愛らしい曲を付けたのでしょう。
こういうシニカルな詩には私はF.ディースカウ以外適任を思いつきません。清楚な女声で歌われると、内容が内容だけにちょっと抵抗が....

( 1998.06.20 藤井宏行 )


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