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Verschiedene Empfindungen an einem Platze    
 
同じ場所での様々な気持ち  
    

詩: ゲーテ (Johann Wolfgang von Goethe,1749-1832) ドイツ
      Verschiedene Empfindungen an einem Platze (1785)

曲: ライヒャルト (Johann Friedrich Reichardt,1752-1814) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Das Mädchen:

 Ich hab ihn gesehen!
 Wie ist mir geschehen?
 O himmlischer Blick!
 Er kommt mir entgegen;
 Ich weiche verlegen,
 Ich schwanke zurück.
 Ich irre,ich träume!
 Ihr Felsen,ihr Bäume,
 Verbergt meine Freude,
 Verberget mein Glück!


Der Jüngling:

 Hier muß ich sie finden!
 Ich sah sie verschwinden,
 Ihr folgte mein Blick.
 Sie kam mir entgegen,
 Dann trat sie verlegen
 Und schamrot zurück.
 Ist's Hoffnung,sind's Träume?
 Ihr Felsen,ihr Bäume,
 Entdeckt mir die Liebste,
 Entdeckt mir mein Glück!


Der Schmachtende:

 Hier klag ich verborgen
 Dem tauenden Morgen
 Mein einsam Geschick.
 Verkannt von der Menge,
 Wie zieh ich ins Enge
 Mich stille zurück!
 O zärtliche Seele,
 O schweige,verhehle
 Die ewigen Leiden,
 Verhehle dein Glück!


Der Jäger:

 Es lohnet mich heute
 Mit doppelter Beute
 Ein gutes Geschick.
 Der redliche Diener
 Bringt Hasen und Hühner
 Beladen zurück.
 Hier find ich gefangen
 Auch Vögel noch hangen.
 Es lebe der Jäger,
 Es lebe sein Glück!

少女

 あの人を見てから
 私どうしちゃったの?
 あの美しい瞳!
 彼がこっちに来るわ
 ドキドキして、私は道を譲り
 糸で引かれたように、逃げ出すの
 ふらふらと夢見心地!
 岩よ、森よ
 私の喜びを隠して
 私のしあわせを隠して


若者

 あの子はここにいるはずだ
 ここに隠れるのを見たんだ
 瞼にしっかりと焼き付いた
 あの子は僕の方に来たけど
 恥ずかしそうに、真っ赤になって
 逃げていってしまった
 これは希望?それとも夢?
 岩よ、森よ
 あの子を見つけてきておくれ
 幸せを連れてきておくれ


恋に悩む男

 ここにそっと隠れ
 朝露に向かって
 私は孤独な運命を嘆く
 誰にも理解されず
 この最果ての地に
 私は静かに引きこもる
 おお、優しい心よ
 おお、語るな、秘めてくれ
 この尽きせぬ苦しみを
 この幸せを隠してくれ


狩人

 今日はとてもツイていて
 いつもの倍の獲物が獲れた
 まったくいい腕前だぜ
 正直者のおいらは
 野ウサギや野鳥を
 たくさん積んで家に帰る
 おまけにここでは罠にかかった
 小鳥まで見つけたときたもんだ
 狩人暮らしを祝おうじゃないか
 この幸運を祝おうじゃないか

ゲーテの同時代人として、彼の作品に多数曲を付け、ゲーテ自身からも高く評価されていた作曲家としては、別項でご紹介したツェルターと並んで、このライヒャルトも忘れる訳にはいきません。
実は20世紀の名バリトン、フィッシャー・ディースカウがこのライヒャルトの再発見者とでも呼べるのか、録音もありますし、その上評伝の本まで書いているという入れ込みぶり、その熱意は1992年に上智大で行われた氏の文化講演会の記録で読むことができます。

http://www.info.sophia.ac.jp/g-areas/bunnkakouryuu.htm

ライヒャルトの作品は、私はAstreeから出ている歌曲とソナタ集というCDしか聴いたことはないのですが、その溌剌としたリズム、魅力的で覚えやすいメロディー、生年が同じハイドンの作品と比べても遜色がないとすら思えました。
(演奏が生気溢れて素晴らしいということもあるとは思えますが)このCDでは、ゲーテの詩でもあまり歌曲として聴けないものが録音されていることも魅力で、今回はそんな中から元々は未完のオペラのために書かれたといわれる(高橋健二訳・ゲーテ詩集:新潮文庫解説による)一連の詩に付けられた曲をご紹介します。

「未完のオペラ」の件にもあるように、モーツァルトの良質のオペラを思わせるような素敵なメロディが表情を変えて4通り歌われています。それぞれ1分にも満たない短い曲ですが、急・急・緩・急の連なりがシンフォニーのように、最後の狩人の歌は狩のホルンの音を模した威勢の良さも聴きものです。ライヒャルトはゲーテの台本によるジングシュピール(歌物語)を何曲か作曲し舞台にかけている作曲家ということで、この一連の詩に付けた歌もそうして聴いてみるとなかなか感慨深いものもあります。

PoulenardのソプラノにShoonderwoerdのピアノフォルテで、その溌剌とした素晴らしさを味わってみてください。

( 2003.02.09 藤井宏行 )


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