Adieux de l'hotesse arabe |
アラビアの女主人のお別れ |
Puisque rien ne t'arrête en cet heureux pays, Ni l'ombre du palmier,ni le jaune maïs, Ni le repos,ni l'abondance, Ni de voir à ta voix battre le jeune sein De nos sœurs,dont,les soirs,le tournoyant essaim Couronne un côteau de sa danse, Adieu,beau voyageur! oh! que n'es-tu de ceux Qui donnent pour limite à leurs pieds paresseux Leur toit de branches ou de toiles! Qui,rêveurs,sans en faire,écoutent les récits, Et souhaitent,le soir,devant leur porte assis, De s'en aller dans les étoiles! Si tu l'avais voulu,peut-être une de nous, O jeune homme,eût aimé te servir à genoux Dans nos huttes toujours ouvertes; Elle eût fait,en berçant ton sommeil de ses chants, Pour chasser de ton front les moucherons méchants, Un éventail de feuilles vertes. Si tu ne reviens pas,songe un peu quelquefois Aux filles du désert,sœurs à la douce voix, Qui dansent pieds nus sur la dune; O beau jeune homme blanc,bel oiseau passager, Souviens-toi,car peut-être,ô rapide étranger, Ton souvenir reste à plus d'une! |
何もあなたをこの幸せの国には留めてはくれないのだから このヤシの木陰も、黄色の小麦も 安らぎも、豊かさも あなたの声に乗せて揺れる若々しい乳房を見ることも 私の姉妹たちが、夕暮れに、群れ集って 丘の頂でダンスを踊っていても さよなら、素敵な旅人さん! おお!あなたが大勢の中のひとりだったら その怠惰な足をとどめてくれる大勢の中の この枝や布のテントの下で! 夢を見る人として、悩みなく、物語に耳を傾けてくれて そして夕べに思いを馳せるの、戸口のところに座り 星の世界に行ってみたいと そんな人々の中のひとりだったら! もしあなたが望まれたのなら、たぶん私たちの中のひとりが ああお若いお方、あなたのお膝元に喜んで跪いたことでしょうに いつも開いている私たちのテントで 彼女はきっとしたことでしょう、眠りにつくあなたのために歌を歌い あなたの顔からうるさい蠅を追い払おうと 緑の葉であおいだことでしょう もし戻ってこないのなら、ほんの少しでも時には思い出してください 砂漠の娘たち、甘い声の姉妹たち 裸足で砂の上を踊っていた者たちのことを おお美しい若き白人よ、美しき渡り鳥よ 忘れないで、できる限り、おおせわしなき異邦人よ あなたの思い出がひとつ以上あることを! |
個人的には同意しかねるところもありますが(もっと素晴らしいと思えるものが他にいくつもあるので)、ビゼー歌曲の最高傑作とも評されている作品です。確かにビゼーお得意の異国情緒あふれる美しいメロディがこれでもかこれでもかと目くるめくように繰り広げられ、非常に印象深い曲ではあるのでそう言われるのも分からなくはないのですが...彼の代表作「カルメン」を思わせるような情熱的なところもあれば、その熱気がすっと引いて非常に楚々とした雰囲気になるところもあり、多彩な変化は聴く者を惹きつけます。
ユゴーがどういう意図でこの詩を書いたのかは良く分かりませんが、彼の詩集「Les Orientales(東方詩集)」の中の1篇ということで、オリエンタルな異国趣味を狙って書いているといったところでしょうか。そんな異国趣味の好きなフランスの作曲家たちはこの詩だけに限らず、この詩集から取り上げてよく曲を作っています。ただヒューマニストとして知られたユゴーですが、ここでは少々人種的な偏見も入ってしまっているような感じですね。まあ実際に目にしたことのない異国を想像しているので仕方ないところもあるのでしょう。
( 2011.10.13 藤井宏行 )