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Friede auf Erden   Op.13  
 
地には平和を  
    

詩: マイヤー (Conrad Ferdinand Meyer,1825-1898) スイス
    Gedichte: VII. Frech und fromm  Friede auf Erden

曲: シェーンベルク,アルノルト (Arnold Schonberg,1874-1951) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Da die Hirten ihre Herde
Ließen und des Engels Worte
Trugen durch die niedre Pforte
Zu der Mutter mit dem Kind,
Fuhr das himmlische Gesind
Fort im Sternenraum zu singen,
Fuhr der Himmel fort zu klingen:
“Friede,Friede,auf der Erde!”

Seit die Engel so geraten,
O wie viele blut'ge Taten
Hat der Streit auf wildem Pferde,
Der Geharnischte vollbracht!
In wie mancher heil'gen Nacht
Sang der Chor der Geister zagend,
Dringlich flehend,leis verklagend:
“Friede,Friede,auf der Erde!”

Doch es ist ein ew'ger Glaube,
Daß der Schwache nicht zum Raube
Jeder frechen Mordgebärde
Werde fallen allezeit:
Etwas wie Gerechtigkeit
Webt und wirkt in Mord und Grauen
Und ein Reich will sich erbauen,
Das den Frieden sucht auf der Erde.

Mählich wird es sich gestalten,
Seines heil'gen Amtes walten,
Waffen schmieden ohne Fährde,
Flammenschwerter für das Recht,
Und ein königlich Geschlecht
Wird erblühn mit starken Söhnen,
Dessen helle Tuben dröhnen:
“Friede,Friede,auf der Erde!”

さて羊飼いたちが羊の群れを
置き去りにして 天使の言葉を
低い門を抜けて
御母と御子のもとへ運んだとき
天上のしもべたちは
星空の中で歌い続け
天は鳴り響いていた
「平和を 地には平和を!」と

天使がそう警告してからも
おお 何と数多くの血なまぐさい行為を
戦争は 荒れ馬に跨り
鎧をまとって行ってきたことだろうか!
どれほど多くの聖夜に
精霊たちの合唱が歌ったことか おずおずと
嘆願しつつ 静かに嘆きながら
「平和を 地には平和を!」と

だが 信じてもよいのだ
弱きものが犠牲に
恥知らずな殺戮の振る舞いの犠牲に
いつまでもなってばかりではないことを
何か正義の力が
殺戮や恐怖の中にも働き
いつか王国が築かれるだろう
平和を求める国が この地上に

しだいに王国は形をなすだろう
その聖なる役割を果たし
危険のない武器を作り出す
正義のための炎の剣を
そしてひとつの王族が
強大な子孫とともに栄えるのだ
彼らの輝かしい喇叭は鳴り響くだろう
「平和を 地には平和を!」と


シェーンベルクの中期以降の作品には合唱を用いたものがたくさんありますが、初期には珍しいでしょうか。逆に初期には多数ある歌曲作品が中期以降にはほとんど書かれなくなるのも興味深いところです。1907年に作曲されたこの無伴奏による混声合唱曲はその意味ではたいへんに珍しい作品でしょうか。かなり気合をいれて緻密な声部進行のものを書いたため、当時の合唱団の技術ではうまく歌いこなせず、作曲者はやむなき妥協として音を取るために室内管弦楽の伴奏をあとから書き加えたのだそうですが、今ではオリジナルの無伴奏で歌われています。詩はマイヤーのもの。聖書のルカ伝などにもある有名なフレーズ「地には平和を」を下敷にしています。今もなお、平和の訪れていない地上の世界ですが、いつか平和な世界がやってくることを期待しながら美しいハーモニーが織りなされていきます。最後の精緻な盛り上がりは実に感動的。初期のシェーンベルク作品の中でも指折りの傑作と言えましょうか。

( 2011.09.03 藤井宏行 )


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