Der Wanderer Op.6-8 8 Lieder |
さすらい人 8つの歌 |
Es geht ein Wand'rer durch die Nacht Mit gutem Schritt; Und krummes Tal und lange Höhn - Er nimmt sie mit. Die Nacht ist schön - Er schreitet zu und steht nicht still, Weiß nicht,wohin sein Weg noch will. Da singt ein Vogel durch die Nacht. “Ach Vogel,was hast du gemacht! Was hemmst du meinen Sinn und Fuß Und gießest süßen Herz-Verdruß In's Ohr mir,daß ich stehen muß Und lauschen muß - Was lockst du mich mit Ton und Gruß?” Der gute Vogel schweigt und spricht: “Nein,Wandrer,nein! Dich lock' ich nicht Mit dem Getön. Ein Weibchen lock' ich von den Höhn - Was geht's dich an? Allein ist mir die Nacht nicht schön - Was geht's dich an? Denn du sollst gehn Und nimmer,nimmer stille stehn! Was stehst du noch? Was tat mein Flötenlied dir an, Du Wandersmann?” Der gute Vogel schwieg und sann: “Was tat mein Flötenlied ihm an? Was steht er noch? Der arme,arme Wandersmann!” |
ひとりの旅人が歩いている 夜を貫いて 力強い足取りで 曲がりくねった谷間や長い丘を 彼はたどってゆく 夜は美しい 彼は歩き続け立ち止まることはない 全く知らずに どこにこの道が続いて行くのかなど そこでは一羽の鳥が歌っている 夜を貫いて 「ああ 鳥よ、お前は何をしてるのだ? なぜ私の考えと足取りを妨げる そしてなぜ注ぎ込む 甘い心の悔恨を 私の耳の中に 立って 聞いていなかればならないと なぜお前は私をその声と挨拶で誘っているのだ?」 気の良い鳥は歌をやめ そして告げた 「違うよ 旅人さん 違うんだ!君をぼくは誘惑なんてしていない このさえずりで 一羽のメスを誘っているんだ この高みから 君に何の関係があるんだい? ぼくだけに夜が美しいわけじゃないし 君に何の関係があるんだい? さっさと行ってくれよ 絶対 絶対立ち止まるんじゃないよ! どうしてまだ立ち止まってるのさ? ぼくの笛の歌声が君に何をしたっていうのさ 旅人さんよ?」 気の良い鳥は黙って そして考えた 「ぼくの笛の歌声が彼に何をしたんだろう どうして彼はまだ立ち止まってるの? 哀れな 哀れな旅人さんは!」 |
多彩な詩人の多彩な詩によるシェーンベルクの歌曲集作品6、最後はフリードリヒ・ニーチェの詩の登場です。ユーモアをにじませてはおりますが、着想はやはりこの哲学者らしいと言えましょうか。さすらい人とくればゲーテをはじめとする幾多の文豪がしみじみと紡ぎだしておりますが、ここではそれが一ひねりもふたひねりもされていてなかなかに考えさせられる詩です。シェーンベルクの付けたメロディも緩急自在で、このひねった詩を実に面白く聴かせてくれます。
( 2011.06.11 藤井宏行 )