Ein Fichtenbaum steht einsam S.309 |
一本のトウヒの木がひとりぼっちで立っている |
Ein Fichtenbaum steht einsam Im Norden auf kahler Höh'; Ihn schläfert; mit weißer Decke Umhüllen ihn Eis und Schnee. Er träumt von einer Palme, Die,fern im Morgenland, Einsam und schweigend trauert Auf brennender Felsenwand. |
一本のトウヒの木がひとりぼっちで立っている 北国の裸の丘の上に 彼は眠る、白い覆いをかぶって 彼は氷と雪に包まれているのだ 彼は一本のシュロの木の夢を見ている その木は、遠く東の国で たったひとりで黙って悲しんでいる 焼けつくような岩壁の上 |
ハイネの詩の中でも歌曲作家には人気が高く、世界中の言葉に訳されて曲がつけられています。リストの曲もその中では傑作のひとつでしょうか。地味なメロディではありますが、北国の厳しい雪の岩山のところの重苦しい音楽と、そのあとの南の国の夢見るような甘い調べとが実に見事な対照をなしています。最後はこの南の国でも焼けつく暑さの現実に引き戻されて厳しく終わるのではありますが。
ちょっと凝り過ぎの感もありますが、聴いていて面白いことは事実です。
( 2011.06.11 藤井宏行 )