Lust der Sturmnacht Op.35-1 Zwölf Gedichte von Justinus Kerner |
嵐の夜の喜び ケルナーの詩による12の歌曲 |
Wenn durch Berg und Tale draussen Regen schauert,Stürme brausen, Schild und Fenster hell erklirren, Und in Nacht die Wandrer irren, Ruht es sich so süss hier innen, Aufgelöst in selges Minnen; All der goldne Himmelsschimmer Flieht herein ins stille Zimmer: Reiches Leben,hab’ Erbarmen! Halt’ mich fest in linden Armen! Lenzesblumen aufwärts dringen, Wölklein ziehn und Vöglein singen. Ende nie,du Sturmnacht,wilde! Klirrt,ihr Fenster,schwankt,ihr Schilde, Bäumt euch,Wälder,braus’,o Welle, Mich umfängt des Himmels helle! |
表の山や谷間を抜けて 雨が降り積み、嵐がうなり 看板や窓が甲高くきしみ 夜には旅人が道に迷うときも ここの中は心地よい安息があり 至高の愛に満ち溢れている 天のあらゆる金色の輝きが この静かな部屋の中へと逃げ込んだのだ 豊かな人生よ、憐れみたまえ その優しい腕で抱きしめておくれ 春の花たちが咲き出で 雲は行き、鳥たちは歌う 終わることなく、嵐の夜よ、荒れ狂え! 軋め、窓よ、揺れ動け、風除けよ うなれ、森よ、逆巻け、波よ 私を包むのは天の光! |
シューマン歌の年1840年の最後を飾る歌曲集がこの作品35、ケルナ―の詩による12の歌曲です(11-12月作曲)。ケルナ―という詩人はシューマンにもなじみが深い人で、彼のごく初期の習作的作品にたくさんこの人の詩を取り上げています。その後集中的に取り上げたのはこの歌曲集だけのようですが、詩の多彩な表情に見事に寄り添った素敵な音楽揃いの素晴らしい作品です。第4曲「はじめての緑」は単独でもよく取り上げられて有名ですが、他の曲はその完成度の割には知名度はそれほど高くないのが少々もったいないことではあります。
さて、その第1曲はちょっと身勝手な感じもする詩ではありますが、素直な感情の吐露がなかなかによろしいでしょうか。音楽の方も冒頭の暗く激しい嵐の描写がぱあっと明るい家の中へとフォーカスされ、また最後に荒れ狂う嵐へと戻っていくところの表情の変化が見事です。この力のこもった歌曲集の中では少々軽い感じの曲ではありますが、このワンダーランドへの導入としては十分な魅力でしょうか。
( 2011.05.29 藤井宏行 )