Blume und Duft S.324 |
花とそよ風 |
In Frühlings Heiligtume, Wenn dir ein Duft an's Tiefste rührt, Da suche nicht die Blume, Der ihn ein Hauch entführt. Der Duft läßt Ew'ges ahnen, Von unbegrenztem Leben voll; Die Blume kann nur mahnen, Wie schnell sie welken soll. |
春の神聖さの中で あなたをひとつの香りが深いところでかき乱したとしても 花を探したりしないでください その香りをそよ風に奪い取られた花を その香りは永遠なものを感じさせるでしょう 無限の生命に満ち溢れて でも花はただ思い出させることしかできないのです 何とはかなく花は萎れてしまうのかということだけを |
とても深遠な、哲学的な詩です。花の香りあふれる春にこんな難しいことを考えるのもどうかということもありますが、香りこそしないものの、桜の花のはかなさと、それを愛でる人々の心、という日本の今の情景と通じるところがあります。華麗なものが多いリストの歌曲の中ではあまり目立たない穏やかなものですが、楚々と美しく魅力的な歌です。
( 2011.04.15 藤井宏行 )