Hinkende Jamben Op.62-5 Rückerts Gedichte Heft 1 |
足の揃わぬ短長格 リュッケルトの詩 第1巻 |
Ein Liebchen hatt ich,das auf einem Aug'schielte; Weil sie mir schön schien,schien ihr Schielen auch Schönheit. Eins hatt ich,das beim Sprechen mit der Zung anstieß, Mir war's kein Anstoß,stieß sie an und sprach: Liebster! Jetzt hab ich eines,das auf einem Fuß hinket Ja freilich,sprech ich,hinkt sie,doch sie hinkt zierlich. |
ひとりの恋人が俺にはいた、片目が斜視の子だった でも俺は俺は彼女をキレイと思ってたから 彼女の斜視も素敵だったんだ 別の子は、話すときに舌がもつれる子だった でも俺にはまるで気にならなかった その子が「ダーリン」って言うときも 今の俺の恋人は片足が不自由だ ああ はっきりと 言ってしまえば彼女はびっこだ、でも彼女はかわいらしく足を引きずるんだ |
タイトルも含めて今の世の中ではたいへんに気を使う詩です。
ただここで取り上げられた障害を持つ人に対する眼差しは決して冷酷なものではないように思えましたので、私なりに精一杯言葉を選んで訳を試みてみました。もしお叱りがございましたら喜んでお受けいたしますのでお知らせください。
さて、タイトルにあるJambenというのは、古代ギリシャやローマの詩に用いられた短長格(イアンボス)という韻脚形なのだそうで、短い音節の後に長い音節が続く詩格をいうのだそうです。
この長さがそろわないことをこの詩の最後の恋人の障害となっているところとかけている(そして恐らくこの詩自体の形もそうなのでしょう)ところがこの詩のミソなのでしょう。
タイトルはそのため、ずいぶんと悩みましたがあまり露骨な言葉も使いたくありませんでしたのでこんな感じで。現代にこの曲の訳詞をされる方は皆大いに悩まれるところと思います。
( 2011.02.11 藤井宏行 )