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Full fathom five    
  Ariel Songs
五尋の深い海底に  
     アリエルの歌

詩: シェイクスピア (William Shakespeare,1564-1616) イングランド
    The Tempest (テンペスト) Act.1 Scene.2 Full fathom five thy Father lies

曲: ナイマン (Michael Nyman,1944-) アメリカ   歌詞言語: 英語


Full fathom five thy Father lies,
Of his bones are Corrall made:
Those are pearles that were his eies,
Nothing of him that doth fade,
But doth suffer a Sea-change
Into something rich and strange
Sea-Nymphs hourly ring his knell.
ding-dong,
Harke now I heare them,
ding-dong,bell.
ding-dong,bell.

深い深い海の底にあなたのお父上は眠っています
骨は珊瑚になりました。
両目は真珠になりました。
お体は朽ち果てはしませんでしたが
海の不思議な力を受けて
貴くも不思議な宝となりました。
海の妖精は毎時に弔いの鐘を鳴らします
ディン・ドンと
ほら、聞こえるでしょう。
ディン・ドン・ベル
ディン・ドン・ベル


シェイクスピアの劇の中でも妖精や魔法の出てくる異色の作品「あらし(テンペスト)」で、主人公プロスペローに付き従っている妖精エアリアルが、海岸で見つけた王子フェルディナンドに歌いかける歌です。彼は難破した船に父のナポリ王達と一緒に乗っていたのですが、王に娘共々殺されかけたプロスペローの復讐のために船を沈められてしまったのでした。 父王とはぐれた王子に、父の運命をほのめかしながら(実は王も死んではおらずお芝居なのですが)、プロスペローの娘ミランダのもとに王子を連れて行くシーン、不思議な魅力を湛えている歌です。 その不思議さを極限まで磨いているのは、このマイケル・ナイマンの作曲した作品でしょう。この歌はこのテンペストを素材に、奇才ピーター・グリーナウエイ監督の1991年の映画「プロスペローの本」に付けられた音楽を、後に作曲者自身がピアノ伴奏の歌曲へ編曲されたものです。 映画も、テンペストの筋そのままながら、筋を楽しむというよりは、次々あふれ出る裸の男女に度肝を抜かれ、鮮烈な映像美に唖然とさせられた記憶しか私にはなく、筋や音楽には全く記憶がなかったのでありました。

今回、ウテ・レンパーのヴォーカル、マイケル・ナイマン・バンドの伴奏によるLondonレーベルの録音を聴いて、極上のブルース・ミュージックのようなその音楽を再発見したのでありました。シェイクスピアには少々異色の歌かも知れませんが、これくらい濃厚でないとあの映画の映像の濃密さには打ち勝てないような気がします。映画ではナイマン・バンドをバックにソプラノのサラ・レオナルドが歌っているとのことですが、ピアノの伴奏によるレンパーの歌はクロスオーバーの魅力満載でとても素敵です。 冒頭のハミングなんかは、どう聴いても「クラシック歌曲」ではありませんが、これもまたシェイクスピアなのですね。

( 2003.03.31 藤井宏行 )


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