さくら横ちょう マチネ・ポエティクによる4つの歌曲 |
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今年は桜の開花も早いようなので、日本の春の歌としてはこれを取り上げたいと思います。この詩には別宮貞雄さんも曲をつけていてこれも素敵なのですが、やはり歌の魅力では中田喜直さんのものの方が私にはもっと惹かれるものがあります。
春の夜の幻想的な光景を夢見るように、幻想的に歌われるこの曲は、伴奏のアルペジオといい、歌との掛け合いの仕方といいフォーレの名歌曲「月の光」にそっくりで、その古典的な旋法が儚い桜の花の命を表すのにぴったりとはまって実にいい。詩も桜の花にかけてなくした恋のはかなさを思う、非常に心憎い曲です。春なのに失恋なのが日本人のメンタリティにぴったりくるではありませんか。
BISにある米良美一さんのカウンターテナーの録音で、上述の別宮作品との聞き比べもできて良いのですが、私としては中田歌曲のスペシャリストとも言える伊藤京子さんの録音(KING)が、この曲に関してはとても素晴らしいと思います。
ピアノ伴奏の三浦洋一さんの弾き方も、私はこれでフォーレとの類似性に気付かされたくらいですからとても表現力豊かですし、中田さんの歌曲は、実はピアノ伴奏に凝ったものが多いんだなあと改めて気付かされました。
( 2002.03.21 藤井宏行 )