Verklärte Nacht Op.4 |
浄められた夜 Op.4 |
Zwei Menschen gehn durch kahlen,kalten Hain; Der Mond läuft mit,sie schaun hinein. Der Mond läuft über hohe Eichen, Kein Wölkchen trübt das Himmelslicht, In das die schwarzen Zacken reichen. Die Stimme eines Weibes spricht: Ich trag ein Kind,und nit von Dir, Ich geh in Sünde neben Dir. Ich hab mich schwer an mir vergangen. Ich glaubte nicht mehr an ein Glück Und hatte doch ein schwer Verlangen Nach Lebensinhalt,nach Mutterglück Und Pflicht; da hab ich mich erfrecht, Da liess ich schaudernd mein Geschlecht Von einem fremden Mann umfangen, Und hab mich noch dafür gesegnet. Nun hat das Leben sich gerächt: Nun bin ich Dir,o Dir begegnet. Sie geht mit ungelenkem Schritt. Sie schaut empor; der Mond läuft mit. Ihr dunkler Blick ertrinkt in Licht. Die Stimme eines Mannes spricht: Das Kind,das Du empfangen hast, Sei Deiner Seele keine Last, O sieh,wie klar das Weltall schimmert! Es ist ein Glanz um Alles her, Du treibst mit mir auf kaltem Meer, Doch eine eigne Wärme flimmert Von Dir in mich,von mir in Dich. Die wird das fremde Kind verklären, Du wirst es mir,von mir gebären; Du hast den Glanz in mich gebracht, Du hast mich selbst zum Kind gemacht. Er fasst sie um die starken Hüften. Ihr Atem küsst sich in den Lüften. Zwei Menschen gehn durch hohe,helle Nacht. |
ふたつの人影が 木の葉の散った冷たい森を歩く 月もいっしょにゆく、彼らは月を見つめる 月は進んでゆく 高いカシの木々の上を 雲は天上の光を陰らせることはなく 暗い木々の先端はそこまで伸びている 女の声が語る: わたしは子を宿しています、でもあなたの子ではありません 私は罪にまみれて歩いています あなたの傍らを 私は自分をずっと責めてきました 私にはもう幸せなど考えられません ずっと私には強い願いがありました 人生の意味を、母となる喜びを求めること そして責任を、だから私は大胆になったのです 私は捧げました 震えながら 私の女を ひとりの見知らぬ男に抱かれて それでも私はそのことで祝福されているのです いま人生は自分に報いるのです いま私はあなたに、おおあなたに出会ったのです 彼女はおずおずとした足取りで歩く 彼女は空を見上げる、月もいっしょにゆく 彼女の暗い瞳は光の中に飲み込まれている 男の声が語る: その子、お前が孕んでいる子を お前の魂の重荷にさせはしない ご覧、何て澄み切って全世界が輝いているのかを ここのあらゆるものに光が投げかけられている お前は私と一緒に冷たい海に投げ込まれたが それでもなお暖かさのきらめきがある お前から私の中に 私からお前の中に その暖かさはその他人の子をも喜びに輝かせるのだ お前はその子を私に、私の子として産むことになるだろう お前は光を私の中にもたらし 私自身をも子供にしてしまったのだ 彼は彼女のがっしりした腰を抱く 彼らの吐息はそよ風の中でくちづけ合う ふたつの人影が気高くも、明るい夜の中を歩いてゆく |
個人的にはこの内容では昼時のテレビのメロドラマの陳腐なシーンを連想してしまって、デーメルの詩の中にあってもそれほど凄い作品とは感じないのですが、これの出版された年である1896年においてはこのような不義の子供の妊娠、そしてそれを夜のデートで話題にしてしまうなんていったテーマで詩を書くこと自体がかなり鮮烈なことであった、というのもあるのかも知れません。若きシェーンベルクがこの詩を読んで感動し、弦楽6重奏の研ぎ澄まされた美しい作品「浄夜」を書いたのは世紀末も押し迫った1899年のことです。ほとんど詩が書かれたのと同じ時期なのですね。
こちらの曲の方もシェーンベルクの代表作のようになってしまっていることに異議がないわけではありませんが、確かに彼の天才的な腕を感じさせる傑作のひとつであることは間違いないでしょう。
申し上げるまでもありませんが、シェーンベルクのつけた音楽は弦楽のアンサンブルであって、別にこの詩が歌われたりしているわけではありません。念のため書き添えておきます。
( 2010.10.31 藤井宏行 )