Liebhabers Ständchen Op.34-2 Vier Duette |
恋する者のセレナーデ 4つの二重唱 |
Wachst du noch,Liebchen? Gruss und Kuss! Dein Liebster naht im Regenguss. Ihm lähmet Liebe Hand und Fuss; Er möchte so gern zu seinem Schatz. Wenn’s draussen noch so stürmisch ist, Ich kenne junger Burschen List. Geh hin,woher du kommen bist, Ich lasse dich nicht ein. O lass mich ein die eine Nacht, Die eine,die eine Nacht, Die Liebe ist’s,die glücklich macht (Steh auf und lass mich ein!) Horch,wie die Wetterfahnen wehn! Sieh,wie die Sternleine untergehn! Lass mich nicht hier im Regen stehn. Mach auf dein Kämmerlein. Der Sturm nicht,der in Nächten droht, Bringt irrem Wandrer grössre Not, Als einem Mädchen jung und rot Der Männer süsse Schmeichelei’n. Wehrest du,Liebchen,mir solche Huld, So tötet mich die Ungeduld, Und meines frühen Todes Schuld Trifft dich allein,ja dich allein. Nein,nein,nein,nein, Ich lass dich nicht ein. Das Vöglein auch,das singt und fliegt, Von Vogelstellers List besiegt, Zuletzt in böse Schlingen fällt,ruft: O traue nicht dem Schein! O lass mich ein die eine Nacht … Nein,nein,nein,ich öffne nicht … |
君はまだ起きてるかい、カワイコちゃん?挨拶とキスを! 君の恋人が雨降る中やってきたよ 愛がこの男の手と足を動かしてきたのさ この愛する人のところにどうしても行きたいってね 外はどんなに嵐が吹き荒れていても あたし若い男の人のたくらむことは分かってるわ 帰ってよ、あなたの出てきたところへ あなたを中にいれるわけにはいかないわ おお 入れておくれよ、一晩だけでも 今夜 一晩だけでも それこそが愛情だろ、幸せをもたらす (起きてぼくを入れておくれよ) 聞いてよ、風見鶏のうなりを ご覧よ 星なんか全然見えない ぼくをこんな雨の中で立たせないでおくれよ 開けて、君の部屋に入れておくれよ この嵐は夜毎に さすらう旅人たちを困らせるとはいっても 若くてピチピチの女の子にとっての 男の人の甘い誘惑ほど危険じゃないわ してくれないのか、恋人よ、ぼくにほんの少しの同情も 耐えられなくってぼくは死んでしまうよ それでぼくがこんなに若くして死んでしまった責任は みんな君にあるんだよ、君だけに ダメ ダメ ダメ ダメ あたし あなたを入れるわけにはいかない 小鳥が、歌いながら飛び回っていても 鳥刺しの甘い誘いにだまされたら 最後には悪い罠にかかって叫ぶのよ ああ 誘い声を信じちゃだめよって おお 入れておくれよ、一晩だけでも ダメ ダメ ダメ ダメ 開けるわけにはいかないわ |
1840年、歌曲をたくさん書いたシューマンには、ハイネやリュッケルト、シャミッソーなど幾人か集中的に取り上げた詩人がいます。その中のひとりが実はスコットランドの民謡詩人ロバート・バーンズです。ゲルハルトという人のドイツ語訳ですが、作品25の歌曲集「ミルテの花」に集中的に取り上げられているばかりでなく、ここでこうして愛の二重唱にも2曲、なかなか面白い作品が取り上げられております。
「ミルテの花」におけるバーンズの詩の選択は、リュッケルトやハイネのストレートな愛の詩に彩りを添えるある種クセ球的な扱い。従って「献呈」や「君は花のよう」などのように歌曲集を離れてポピュラーとなっている曲は皆無な状況です。他方作品27に取り上げられた「赤いバラ」の詩や、ここで取り上げられた愛の二重唱は(この曲のみ違いますが)、よりストレートに愛の喜びを謳歌しているような素敵なものを選んでおり、シューマンの愛のメッセージがより素直に伝わってくるような気がします。
この曲はしかしながら、風雨をついてやってきた青年を、決して入れまいとする乙女の抵抗。ブラームスの「甲斐なきセレナーデ」など、こういうシチュエーションをユーモラスに描写するものは他にもたくさんありますが、ここでシューマンがつけたメロディは悲壮感さえ漂わせる短調の激しいメロディ。「入れてよ」と「ダメ ダメ」の激しい掛け合いの応酬です。それがまたほのかに可笑し味を誘うのが何ともいえず良いです。
( 2010.10.22 藤井宏行 )