Liebesgarten Op.34-1 Vier Duette |
愛の庭 4つの二重唱 |
Die Liebe ist ein Rosenstrauch. Wo blüht er,wo blüht er? Ei nun,in unserm Garten, Darin wir zwei,mein Lieb und ich, getreulich seiner warten, wofür er uns aus Dankbarkeit Alltäglich neue Blumen streut. Und wenn im Himmel Rosen blühn, Sie können doch nicht schöner blühn. Die Liebe ist ein klarer Bach. Wo zieht er,wo zieht er? Ei nun,in unserm Garten, So viele Wellen,so viel Lust Und Freuden aller Arten. Auch spiegelt er die Welt umher, Als ob sie noch viel schöner wär. Drauf fahren wir so lustig hin, Wie Vöglein durch den Himmel ziehn. Die Liebe ist ein holder Stern. Wo glüht er,wo glüht er? Ei nun,in unserm Garten. Ach Liebchen sprich,was läßt du mich, Doch oft so lange warten? Denn seh' ich dich nicht alle Stund, Des Sternes Glut mein Herz verbrennt; Doch kommst du,steigt er mild herauf, Als geht im Mai die Sonne auf |
愛はバラの茂み どこにそれは咲いてるの? もちろん、私たちの庭の中よ そこで私たちふたり、恋する人と私 心の底から花咲くのを待っている その気持ちに感謝で応えて 毎日新しい花が咲き出でるの 天国にバラが咲いたとしても これほどまでに美しく咲くことはない 愛は澄んだ小川 どこにそれは流れているの? もちろん、ぼくたちの庭の中さ たくさんのさざ波が、たくさんの喜びが ありとあらゆる喜びがある それにあたりの世界を映し出している 本物よりもずっと美しい姿で その上を私たちは陽気に滑ってゆく 鳥が空を飛んでいるように 愛はすてきな星 どこでそれは光ってるの? もちろん、私たちの庭の中 ああ愛しい人 教えてよ どうしてあなたは私を こんなに長く待たせているの? もしもあなたをどんな時にでも見ていなければ あの星が私の胸を焼き尽くすでしょう だけどあなたが来たなら、星は穏やかに昇ってゆく 五月に太陽が昇るように |
独唱ばかりでなく重唱曲の面でも重要な作品をたくさん残したシューマンの、これは最初の重唱作品です。クララとの結婚を決めた歌の年1840年に書かれた作品のひとつということが理由でしょうか。これらはすべて男女のデュエットで、描写しているシチュエーションにおいても歌のスタイルにおいても4曲すべてが多彩な愛の表情を描き出しています。
第1曲目はライニックの詩。同じ1840年にシューマンはこの人の詩を使った6曲からなる歌曲集(作品36)を書いています。もともと画家で、描いた絵につける詩でも有名になった人ということで、書いた詩にも視覚的なものが多いです。ハイネやケルナーなどの専業の詩人に比べると陳腐だと思われる方もおられるかも知れませんが、このような歌の歌詞として聴く分にはなかなか良い出来のように私には思われます。屈託のない愛の賛歌を、シューマンは大部分男声と女声にハモらせて、気持ちの良い響きの歌にしました。1番と2番の“Ei nun”のところだけソロで歌いますので、ここだけ男女が分かるようにしましたが、あとは特にどちらがということはないように訳しております。
1970年に出されたドイツ・グラモフォンのシューマン歌曲全集では、この作品34はユリア・ヴァラディのソプラノにフィッシャー=ディースカウのバリトンというおしどりコンビによるまさに極めつけの歌唱があります。表情付けの巧さや安定感の素晴らしさで安心してこの美しい響きに身を任せることができます。
もうひとつ最近のリリースでは、ハイぺリオンの同じくシューマン歌曲全集の中のドロテア・レシュマンのソプラノにイアン・ボストリッジのテナーというコンビ。こちらは若々しい爽やかさが魅力でしょうか。初々しい愛の歌には、こちらの方がより感情移入できて聴けるということもあり、両者甲乙付けがたい魅力です。シューマンの2重唱曲、傑作が多いにも関わらずあまり録音されることが多くありませんので、このように素晴らしいCDが2種類もあるというのは大変に有難いことです。
( 2010.10.22 藤井宏行 )