An die Türen will ich schleichen Op.98-8 Lieder Und Gesänge Aus Wilhelm Meister |
戸口へと私はそっと忍び寄ろう ヴィルヘルム・マイスターよりの歌曲と歌 |
An die Türen will ich schleichen, Still und sittsam will ich stehn, Fromme Hand wird Nahrung reichen, Und ich werde weiter gehn. Jeder wird sich glücklich scheinen, Wenn mein Bild vor ihm erscheint, Eine Träne wird er weinen, Und ich weiß nicht,was er weint. |
戸口へと私はそっと忍び寄ろう 静かにつつましく私は立っていよう 慈悲深い手が食べ物を恵んでくれるだろうから そうしたら私は また歩いてゆこう 誰でもみな 自分は幸せだと思うだろう 私の姿を目にするならば 一粒の涙をその人は流すだろう けれど私には分からない どうして泣くのかは |
竪琴弾きの最後の歌はだいぶ下って第5巻第14章より。彼の住んでいた家が火事で焼けてしまい、竪琴も一緒に失われてしまいます。爪弾く楽器もなく、彼の歌う歌はしかし、どん底の絶望を通り越してすべてをふっ切ったかのような清澄なもの。悲しいメロディではありますが限りなく穏やかです。詩は読むとあまりに悲惨なのですが、その悲惨さすら彼は感じられなくなったのでしょうか。
( 2010.10.08 藤井宏行 )